11/12  登山記念日

歳を取ると涙もろくなるというが、それは単に感受性が豊かになると言うよりは経験の蓄積による共感力の高まった、まさしく成長の集大成のようなものではないだろうか。他人の痛み、苦しみ、悲しみ、喜び。若い頃は他人事だったそれらが長年の経験によってより一層感じ入るようになったからこその結果ではあるまいか?

涙ぐむわけではないが、最近どんな映画を見ても面白く感じてしまう自分を見てふとそんな事を思った。昔はもっと文句ばっかだったような気がするんだけどな。

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 <セッション>

賞を何個も獲得しているそうなので有名所だと思うが、楽器をやってる整体の先生がおすすめするので見てみたら…大変面白かった。間をおかずに二週目に突入してじっくり見入ってしまったぐらいだ。

内容には敢えて触れないでおくが『<完璧>を求めるレッスン。二人のセッションは誰も見た事が無いクライマックスへ─』というキャッチコピーに嘘はなかったとだけ。衝撃的過ぎて吟味するために僕はすぐさまもう一周した。

 「・・・・すごかったな。もう一回見ていい?」
 「勝手にしなよ。あたしゃ寝る(´・ω・`)」

妻はこういうのはあまり好きではないらしく、専ら邦画を好む。最近見たのは「滝を見に行く」、「ソロモンの偽証」「紙の月」「キサラギ」など。僕はどちらかといえば洋画の方が好きなのだが、色眼鏡を外して付き合ってみたら思いのほかそのどれもが面白くて唸ってしまった。特にキサラギが面白かった。

その妻が週末、映画に行こうと言ってきた。

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 <エベレスト>

珍しく洋画だ。しかも、僕の好きな登山物。

僕は孤高の人やら神々の山嶺やらを読んで登山物が好きになって以来、現実の冬山登山に憧れというか、興味を抱いているのだがそれを知ってか知らずか…ええ妻やね。

って、今画像探してたら「神々の山嶺」も映画化すんのか!!!

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羽生さんが阿部寛で深町が岡田さんか。岡田さんが若干若い感じするけど羽生は結構ハマリ役やな。

この原作は小説も漫画も非常に素晴らしいのでオススメです。

僕が雪山登山物を見るたびに感じる事なんだけど、月並みだが「どうして登るのだろう」と。全ての登山物における究極のテーマになり得る疑問を物語の中に探している。

本作は実際にあった1996年のエベレスト大量遭難事件にスポットを当てている。

本編中でもやはり、登攀者でありアウトドア雑誌の編集者が隊の仲間に「なぜ山に登るのか」という質問を投げかけているが、隊員達は自分なりの理由はあるようだがそこには命を賭けてまでやるだけの説得力は感じられない。

ジョージ・マロニーは「なぜエベレストに登るのか」という質問に、"Because it is there."(そこにそれがあるから)と答えたが、一説によればインタビューがうざったかったから適当に応えたという話もあるそうね。

ちなみに先に挙げた「神々の山嶺」の中で孤高のクライマー羽生は同じ問いにこう答えている。

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 『そこに山があったからじゃない。ここにおれがいるからだ』

素晴らしい。ちゃんと羽生というキャラをわかると尚更この言葉の深さがわかる。彼は薄っぺらい動機じゃなく、文字通り存在そのものを山に賭けているのだ。

やはりこれも月並みだけど、登る人にしか、登った人にしかわからない何かがあるのだろう。

映画は本編中でも史実通り、隊員達はエベレストの頂を踏む。ただ、そこまでして登ったわりに見ていて達成感のようなものはそれほど感じられない。内に込めた感動という種類のものもあるんだろうが、切羽詰った登攀計画、天候を気にしながらのスケジュール。余韻を味わう暇も無いというのが感想だ。だからこそその一瞬のために全てを投げかけるだけの何かがどこにあるのか、不思議である。

そこに何かあるのだろうと…日常では得られないかけがえのないそこでしか見られない、人生観が変わるほどの刹那があるのだろうとは想像出来るのだが… いや、想像すら出来ない何かがあるのか。

しかしそれは何も山じゃなくたっていいような気もする。極端な話、ギャンブルだって似たような部分はある。それでも今尚多くの人が山で命を落とす。大の大人が細心の注意を払って尚、遭難する者は後を断たない。

 (どうしてそこまでして登るのだろうか)

ニュースを見るたび不思議に思う。

山は古くから信仰の対象になっていたりするけれど、山に行かないとわからない何かは本当にあるのかもしれない。心を掴んで離さない、そこでしか決して味わえない時間があるのかもしれない。

 「俺も、登山初めてみようかな」

帰り道、良い映画だったねと和気藹々と評論を述べながらのドライブ。たった今、たくさんの遭難者を出した映画を見てきたばかりでアレだが、それ以上にそこにある何かに心惹かれる。僕は思った事を正直に口に出してみた。すかさず妻がこう返す。

 「冬山が、いいよ!」

コメント

  1. ヨシホイ より:

    嫁「計画通り」
    完全犯罪の匂いがしますぞw
    日本一の霊峰の真下に住んでおきながら眺めて天気予報ぐらいにしか使ってなくて申し訳ない
    登った人は例外なく「一度は登るべき」と言うくらいだから何かあるのでしょうね。9合目の山小屋で仕事している友人は下界に降りてくるのイヤだとまでいいますし
    なんで負けても負けてもパチ屋にいくの?
    「ここに俺がいるからだ」
    これはかっこよくないw

  2. 椰子 より:

    つ「クリフハンガー」
    登山といえば、前にヤンジャンで連載されてた孤高の人が面白かった記憶が。
    僕は高いところ大の苦手なので一生登山とかしなさそうですが、人はスリルを登山とかギャンブルに求めてるのかななんて思います。
    年を取ると涙もろくなりますねー。
    しばらく放置してたゲームやってたら、最終決戦で主要キャラが死んでしまいオイオイ号泣。
    まさかいい年して王道RPGで泣くとは思わなかったですw

  3. ドニート より:

    懸命に登った天井の先には何もなかったです。グラフは山どころか崖を下っていました。

  4. のっぽさん より:

    先日、富士宮でゴルフをした時に富士山を間近で見ましたけど、あれを登る気にはなれなかったです。
    明後日竹田城に行くんですが何とか晴れてくれないかなぁ。頼むよumiさん!!

  5. umi より:

    >>ヨシホイさん
    最近嫁の弟も冬山縦走とかやったんですよね。教えて貰おうかしら^^
    富士山登った事ないとは意外ですな。自分は小学生の頃に登って高山病でひいひい言ってた記憶ありますが、歳が歳だし今登ると全然感想違うんだろうなぁ…
    小説などでも山屋が日常を「下界」と表現する事が多いのですが、それだけ世間と隔離された神聖な場所という認識があるのかもしれませんな。
    負けても負けても行くのは中毒や節子!
    >>椰子さん
    クリフハンガーって聞いた事あるけど登山物なんですか!?面白いなら見てみます(゚∀゚) YJの孤高の人は原作と大分違ってもはや別物ですが、あの人の漫画の表現力は半端ないのであれはあれで大変素晴らしい作品ですよね!
    ある登山家が山に行くのは死を身近に感じられる場所だからと言ったのですが、ギャンブルは臨死体験と阿佐田先生も言ってましたね。
    RPGで泣いた事はないけど、最近のゲームはシナリオに力入れてるし全然あるんじゃないでしょうか。エロゲは十年前からその域に達していましたがねw
    >>ドニートさん
    そりゃまあグラフにしちゃうと下り坂降りて目指す事になるわけですからねw 懸命に降ったけど地上に戻れなかったという表現が正しいのかもw
    >>のっぽさん
    登ってみると案外…って感じですよ、多分^^; 自分は小さい頃に登ったんですが…頭めっちゃ痛かったけどそれ以外は疲れとか大して印象に残ってません。自衛隊の砲撃訓練?の音がすごい聞こえたのが印象的でした。日本人なら静岡人なら登れるうちに!GO!
    竹田城って…たしか日本のマチュピチュと言われてるとこですよね!?それは是非晴れてくれなきゃ困りますね><
    でも自分、その日は小学校のドブ掃除の当番で、雨だと屋内作業になるから…降って欲しい派なんすよ><サーセンw

  6. kenji より:

    取り敢えず近くの登れる山でハイキングですな

  7. umi より:

    正論すぎて目を背けたくなるぜ!

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