7/21  大海物語inカンボジア その5

・3日目

抗生物質一気飲みが効いたのか、この日は朝から体調は悪くない。昨日は食べられなかったホテルの朝食を摂る事に。

 「でも…お高いんでしょう?」
 「それがなんとっ…、無料なんです!!」

 「あらやだ。これが無料だなんて一日分損したわ」

カンボジアのコーヒーはドロッドロの砂のようで心なしか甘い。だがそれがいい。あとはメニューにトマトが入ってなかったら個人的には満点だったな。

 「いやー、それにしても楽しみですね、ラピュタ」
 「ええ、気付けてよかったですよ^^」

この日は本来なら前日回りきれなかったアンコールワット周辺の遺跡を隅々まで自転車を借りて廻ろう!というのが当初の予定であったが、昨夜ホテルの部屋に備え付けられているパンフレットを見ていたら気になる遺跡を発見して急遽予定変更。『ラピュタのモデルになった』と言われるベンメリア遺跡へいく事にした。

ここらへんの行き当たりバッタリ感が個人旅行の醍醐味であろう。ツアーの楽チンさも捨て難いけど、やっぱり僕はこっちの方がいいな。っていうかそんな有名な場所、カンボジア来る前に調べておけって話だけどさ…

ところでベンメリア遺跡はアンコールワット遺跡群から相当離れた場所にあるため、車かトゥクトゥクを一日チャーターしないと厳しいらしいとパンフレットには書いてある。

 「今A・Kに聞いてみたら、一日35ドルでいいよとの事です」
 「ほほう」

市内のアンコールワット周辺でトゥクトゥクをチャーターしたら18ドルだったから、倍額という事か。なるほど、相当遠いのだろうとわかる。ちなみに、ホテル経由で人を用意してもらうと75ドルらしいからアホくさい。

と言うわけで、昨夜のうちにA・K(トゥクトゥクのドライバー)と契約を結び出発の準備は整った。今日は10分ぐらい遅刻しても許してや…

 「ヘイ!俺の名前はソッケア。昨夜A・Kが警察のご厄介になって来れなくなったから頼まれて俺が来たぜ!」
 「・・・け、警察!??逮捕されたの??」

9時。キッチリ時間通りに待ち合わせ場所に現れたのはA・Kの代理を名乗る人だった。

 「あー、A・Kの客の外国人同士で殴り合いの喧嘩があったとか何とか聞いてるけど…」
 「へ、へー^^;」

確かに繁華街で客引きもやってりゃトラブルにも巻き込まれるだろうけどさぁ…よりによってこのタイミングでかい^^; しかし律儀に代えを寄越す辺りは見上げたものである。

 「ベンメリアまでどれくらいかかりますかね?」
 「うーん。二時間ぐらい?」

ここからひたすら風景。

と言ってもトゥクトゥクなら何時間でも大丈夫。いつ乗っても気持ちいい。

・・・と思ってたけど同じような風景が続くとさすがに飽きてくるな。

それにしてもまあこのSOKKEAさん、標識もないのによくもまあスイスイと地図も見ずに行けるものだ。

 「あー、俺は郊外の遺跡案内をよくやるからね」
 「hmmm」

ソッケアはそう言ってたが、目印が何もない場所を何度も曲がっていく様は見ていて驚愕。国道一号線みたいな一本道があるなら話は別だが、片道二時間下道だけをナビなし標識なしで走り続けるなんて考えられん…

実はトゥクトゥクをチャーターする前に、自分らでバイクを借りて走れないかと調べてみたが、どうやら外国人は市内でバイクを借りることを禁止されているらしい。

結果としてはバイクをレンタル出来たとしても絶対道がわからなかったから良かったけれど、それとは別にして一度ぐらい颯爽とこの地を走ってみたかったなぁ。どうしてもというなら、首都のプノンペンならレンタルできるそうなのでそこから走ってこれるそうだが… 八時間ほどのドライブが必要だとか。

一時間ぐらい走るとさすがにもう道路は整備されていない。

しかし人はどこにでも住んでいて、学校らしき建物もたくさんある。下校中か、すれ違う子供達に手をふると凄い笑顔でみんな手を振り返してくれた。気分はちょっとシーナさん。ヤッホー!

郊外へ行くにつれ風景も変わってきて、高床式住居??みたいなものが増えてきた。動物対策というより雨季の洪水対策かね?

ほんっとーに周りに何もないところにポツンと聳え立つガソリンスタンド。右側に並べてあるビンにはLPガス燃料が入ってるのだそうだが、LGガスって液体にもなるんだね、知らなかった。

さて、二時間のドライブの末ようやく賑やかになってきた。観光バスや広い駐車場、お土産屋が並ぶと遺跡の目印となるのだが、ここらへんは日本の観光地と大差ない。

来ましたベンメリア遺跡入り口!!

やけに人が多いように見えるが、入り口に固まっている人々は現地ガイドの方。この遺跡はまだ比較的発見されてから新しく、足場も悪く道が複雑なので危険だからとガイドを雇うことをソッケアから強く勧められたが…

 (ま、どうにかなるでしょ)

初日の経験からあまり院内ガイドに良い印象を持っておらず、僕らは別段自分たちから声を掛ける事なく現地ガイドの方々を通り過ぎていく。ここで向こうから声を掛けてくるようなら値段交渉して雇おうかなと思っていたが、思惑に反し向こうからも特に声を掛けてくる事はなく…

長い回廊跡?を本殿まで歩いていく。

 「オニーサン、ラピュタ?ラピュタ?」
 「?」

すると、程なくガイドの付いていない僕らを見て迫り来る影が…三つ。

なんと現地の子供達である。

 「ラピュタ!コッチ、コッチ」

そうして、大通りを外れた森を指差し「ラピュタ、コッチ」と僕らに手招きする。森に子供にまるで本当にジブリの世界のようではないか。



 
 「ラピュタって言ってますけどどこ連れてく気ですかね?あのまま真ッ過ぐ行けばベンメリア=ラピュタの遺跡のはずなんですけど」
 「もしや現地の人しか知らない秘密の場所があるとか(゚∀゚)!!」
 「うーん・・・」

何やら浮かない顔のゆうたさんだが、状況に後押しされるように為すがまま付いていく。なんだかんだでこの非日常感はギリギリまで浸っていたくなる魅力があるわけで・・・ ここまで来るともうドキドキよりワクワクの方が大きくなっている。

どんどんどんどん、森の奥へと…

 「×○△□!!!」

 「「キャー!!!」」

 (!!?)

ふと、前方より現れた現地人の大人が僕らの姿を見るなり怒鳴りつけてきた。途端に子供らは蜘蛛の子を散らすように来た道を戻る。

 (!???)

わけがわからず固まっている僕らに子供らが「ついて来て」と手を取り走る。走る。走る。走りながら段々状況が飲み込めてきた…

 「ゆうたさん…さっきの人、ガイドですよね?」
 「ええ、多分この子らはガイドの真似事しようとしてたんじゃないですかね」
 「で、現地ガイドに見付かって怒られた…と?」
 「恐らく。もしかしたらこうやって逃げるところまでが作戦なのかもしれませんw」

程なく森の入り口辺りまで走ると子供らは何やら言い訳がましくゴニャゴニャ捲くし立てる。何と言ってるかはわからないが、大体何を言いたいかはわかる。

 「ゆうたさん、一瞬でも楽しませて貰いましたし、チップあげましょうかw」
 「そうっすねw」

恐らくあのまま進めたとしてもラピュタ=ベンメリア遺跡の側面とかに行き着くだけであろう。それはそれでよし、見付かっても何だかんだ言ってチップをせびる。子供達なりに上手いことやろうと考えた作戦なのだろう。

というか、「ラピュタ」という固有名詞を使っている時点で薄々感づいてはいたのだが何だか憎めなかった。ファンタジー色が余りにも強すぎて…


と、言うわけで演出料としてチップをあげると満面の笑み…は一瞬の事で、このあと仲間内で壮絶な取り合いが始まる。分ける、という事はしないのか?あまり仲は良く無いのかもしれないw

気を取り直して大通りに戻る…と、すぐさまいい感じの瓦礫の山が!おお…なんかもうこれだけでラピュタっぽい気がしてきた。

ううむ…期待させるぜこんちくしょう。

結局遺跡のまん前まで来てもガイドが捕まらなかったが、それもまた一局。気にせず進みましょうかね。

 「おー、これ、なんかパズーがラピュタ城外壁に取り付いてるときの場面そっくりですやん!」
 「んー??」
 「ほら、こんな感じで」



 
 「HAHAHA!」
 「「!!??」

入ってすぐのところで遊んでいたら突然現地人らしき人が笑いながらフレンドリーに近づいてくる。そうして、こっちへ来てごらん?などと言って勝手に前を歩き始めた。

 「・・・なんかこのパターン、憶えがあるんですけど」
 「奇遇ですな」

もしかしなくても、お馴染みカンボジア名物遺跡内押し売りガイドだったんだけど、ガイドは別にいいとして、この人達には一言確認を取ろうという文化は無いのだろうか?なし崩し的に案内して好意を盾にチップを求めるってのはどうしても好きになれないな…

しかしまあ、ここベンメリア遺跡は聞いていた通りだだっ広く、おまけに瓦礫の山で道無き道を往くためこの人がいてくれて助かったのは間違いない。これから行こうと考えてる方は無難に入り口でガイドを雇いましょう。値段は応相談だけど、恐らく金額以上の価値は感じられると思います。

一応順路?なのか、舗装された通路もあるが、ガイドさんはその道は通らない。恐らく撮影スポットはそういう場所にしかないのだろうが、しかし自分たちで行こうと思ってもなかなか厳しいと思うぐらい目印のない道を進む。彼がいないとこんなところを通ろうという発想にはならなかったと思う。

登ったり…

ぶらさがったり…

また登ったり…

いやー、しかし本当遺跡と緑って映えるなぁ。

ここベンメリア遺跡には中庭のような空間があり、この庭は大雨が降ると水が溜まる構造になっているらしい。もしかしたら庭ではなく、初めは水が張っていたのかも…。ここに水が張る…その光景は大変神秘的なものになるであろう事は想像に難くはない。ただし、雨季は現地人以外の立ち入りが禁じられているそうなので生で見れるようになるのはまだまだ先の事だろうね…

遺跡の「整備」というものを考えさせられる。

中央部にある巨大な建物。階段で側壁に上り見下ろすような形になるがここは必見!個人的にはラピュタというよりゼルダの伝説だなぁ…

マスターソードがあった方が自然な気さえしてくる。

うーん…本当にすばら

 「试着看不rapyuta?」
 「啊,正是你是shita啦」
 「正是你最高地pazu」
 「「wwwwww」」

 (・・・・ッ!!)

そういう場所の雰囲気をぶち壊しにするのはいつだって「かの国」の方々。ほんっとーに観光地に生息してるんじゃないかってぐらいどこにでもいて、基本団体行動ばかりなので声もでかいし態度もでかいし… 本当勘弁してくれ(‘A`)厳かな雰囲気が一瞬で台無しだべ。

さて、まだまだベンメリアの写真を貼りたいところだが後は行ってからのお楽しみという事で!個人的にはここベンメリア遺跡はアンコールワットよりも満足度は高かったし、僕の行った場所の中で1.2を争うベストスポットになりそうです。もののけ姫の森のモデルとなった白谷雲水峡といい、やはりジブリスポットは雰囲気点が高いよなぁ… 最高にオススメします!

 「いやぁ、なんだかんだでこの人いてくれて助かりましたね」
 「ほんとう、そうっすね」

ガイドの方にお別れをする。事前に調べた他の旅行者のブログなどを見た感じ、ガイド料の相場は2ドルから3ドル程度と書いてあったので、二人で5ドルを渡す…と、

 「実は俺は出稼ぎに来ていてな、家族を遠くに残して~~略~~だから、一人10ドルずつくれないか?」

さらっとガイドの人はこんな事を言いやがる。勝手に案内してガイド契約も結んでいなくて、あくまでこれは「チップ」なのだが、よくもまあここまで強気に出れるものだぜ… こういうときにそれらしい身の上話を語るのは、やはりどこの国でも同じなんだね。にしてもこの国にいると「チップ」の定義がわからなくなる。チップってこんなあからさまに要求するものだっけ??

帰り間際、日本人の集団とすれ違ったが、「例の子供達」がしっかり彼らに張り付いているのを見て僕らは満足げに頷いた。

 to be continued →

コメント

  1. ( ・ω・)y-~~~~ より:

    大阪にもあるんじゃなかったっけ?ラプタ(´・_・`)
    離島行け離島!イイゾ
    仕事以外で行った事無いけど・・・・

  2. ヨシホイ より:

    ラピュタと聞くと空中庭園みたいな感じを想像しますが確かにゼルダっぽいですね。
    ガイドもそうですし既成事実を先に作っておくやり方は釈然としませんね。僕もバナナを剥かれて手にもたされて「マネー!!」って言われた時はびっくりしましたw

  3. あかべー より:

    お久しぶりです
    楽しそうですね
    個人旅行の醍醐味は事件事故との隣り合わせ(主に自分から)ですもんね
    うみさんもブログに書けない事や
    嫁さんに言えない事の10や20あるとは
    思いますがご自愛下さい

  4. のっぽさん より:

    モンスターファーム2を引っ張り出してやり始めたけど、umiさんはやったことあります?現在はガリを育成中。

  5. umi より:

    >>( ・ω・)y-~~~~さん
    大阪に!?それは初めて聞きましたが、大阪って単語だけで漂うネタ臭…w
    離島は来月行きます
    >>ヨシホイさん
    バナナw 多分ですけど皮剥いてるフリして断られたの使いまわしとかしてるんでしょうねw
    >>あかべーさん
    お久しぶりです^^
    最高に楽しかったですが、その後の展開の強烈さも相まってまるでこの旅行が夢だったように思えています。歳を取ると更にこういう風に思うんでしょうかね??
    言えない事、書けない事だらけですが頑張りますwご丁寧にありがとうございます><
    >>のっぽさん
    なんか昔そんなゲームありましたね。CDでモンスター生成するんでしたっけ?
    自分はやった事ないっすね!ゲームはエロゲとパワプロ以外ほとんどやらないです><ドラクエもやった事ないもんなー

  6. kenji より:

    バックピース´д` ;

  7. umi より:

    へー、ピース裏返すと相手を侮蔑する意味があるんだ。知らなかったな。相変わらず博識ですね!!
    この子ら、万が一意識してやってたとすれば相当だなw