1/26  身体が語る

最近通うようになった整骨院は、僕がこれまで通っていた場所とシステムがずいぶんと違う。

まず施術時間が90分と40分と大きく違うのだが、料金もそれに伴い3000円から1500円とお時間相応のものとなる。前者(これまで通ってた方)はベッドも1つしかなく、完全個人営業のマンツーマンでじっくりと向き合ってくれるという感じなのだが、後者はベッドがズラーっと並んでスタッフの数も多い。

施術こそ電気を流して筋肉をほぐしてから身体を触っていくという点は同じなものの、最近通っている方は院長先生は最期に仕上げとして診てくれるだけである。時間にして5分にも満たない。あんだけベッドが並んでりゃそりゃ仕方ないと思うが、つまり、こちらの方は基本的に修行中のスタッフがほとんど相手をする事になる。薄利多売を画に描いたような方式なのだ。

初めからどこか違和感を抱いていた。

それはスタッフの技量に、ではなく…いや、それもあるにはあるんだがw、それ以上にスタッフの応対に、店の雰囲気に何か違和感を感じていた。

 「コンニチワー、キョウはオシゴトオヤスミデスカー?」
 「え、ええ(゚∀゚;)」

院長先生が来るまで施術を行うスタッフは、何か会話をしろと無理やり言われてるかのようにとにかく話しかけてくる。まあそれはいいとして、問題なのがその内容。

 「雨だとお仕事休みなんですよねー?」
 「お住まいは○○の方ですよねー?」
 「義父さんとうまくいってないんですよねー?」

 ( (;^ω^) )

恐らく、顧客名簿みたいなところに毎回会話の内容を書き込んでいるのだろう。院長先生が来るまで繋ぐスタッフは特に固定というわけではなく、その都度手の空いてる人が担当するようなのだが…これがまた見事に判を押したように全く同じ会話をしてくるわけでw

あまりにも同じ事ばかり喋るのでゲームの村人Aみたいな感じで正直怖い。というか、毎回同じ内容を振られるこっちの身にもなってほしい。

だが、彼らは頑なに何とか話しかけようとして、酷い時にはメモみたいのを見ながら会話してきた人もいた。

確かにそれ(プロフィール帳のようなもの)は会話のきっかけとして有効な手段かもしれないが、お互い乗り気じゃなければ会話が弾もうはずもない。ただただ与えられた仕事(会話)をこなそうという感じがありありと見て取れて、そうまでして話さなきゃいいのにと思うのだが向こうはそうもいかない事情があるのだろう。

思えば違和感の正体はここにあったと思う。

この整骨院は、というよりどの整骨院もどれだけ地域に根付けるかが商売の分かれ目だと思う。友人で接骨院を開業して成功している男がいるが、彼曰く「いかにジジババと学生を囲い込めるか」らしい。なるほどな。確かにここも爺さん婆さんと学生でいっぱいだ。大部屋に置かれた十数のベッドにはいつもお客さんで一杯で、院長先生は大声で常に誰かと会話している。

その様はアットホーム感満載で僕は苦手なのだが、院長先生がそういうキャラだからこそ、地域の人が集まる場になってるのかなーとも初めは思ってた。

 (はて)

しかし違和感は拭いきれない。

一見明るい話し声に溢れた空間に思えるその室内、常連客が来店するとすかさずラーメン屋の如く誰かのあいさつに次ぐあいさつの合唱団。

 (なんだろう、すごく不自然というか、明るさが嘘くさいと言おうか…)

それは単にいつもの僕の穿った偏屈者の見方なのかもしれないが、とにかくずっとそんな風に感じてた。居心地は決してよくない。

さて、そんなある日の事。

 「コンニチワー、キョウはオシゴトオヤスミデスカー?」
 「え、ええ(゚∀゚;)早く終わりまして」

恒例の村人との会話を楽しみつつ、なんだか適当だなーという感じのマッサージを受けていた。いいのだ。院長先生が仕上げで看る最後の五分の骨格矯正ために通っていると思えば、道中のこのマッサージは単純に気持ちが良いというだけのサービスタイムと最近は割り切っている。

 「アー、ダイブフトモモハッテマスネー」
 「ですねー最近よく攣るんですよ」

しかしこの日はなぜか、いつもと違う村人だったのかじゃあちょっくら足を揉んでやんよ!と珍しく入念なマッサージが始まったと思いきや…

 「お前、何してんの?」
 「!??」

突然、院長先生がやってきておや?と思うぐらいの低いトーン…いつもより院長先生来るの早いなーと思ってたら、どうやら説教に来たようだ。

驚くことに僕の足を揉みながらネチッこい説教は続く。

院長の言い分は「与えられた指示以外の施術を勝手にやるなって何度言えばわかるんだ?それが原因で客に何かあったらどうすんだ?」…と言う至極もっともなものだったけれど、それにしたって明るいアットホームな雰囲気が売りの(はず)の店内でこうしてネチネチネチネチ院長のキャラを壊しかねない説教を続けるというのはどうしたものか。

 (というか、俺には隠す価値もないってことですか???)

院長の意外な一面を見たというより、これが違和感の正体かと合点が言った気分であった。

 (なるほど、嘘くさいと感じるわけだよ…)

 

気分はゴローさん。孤独の整体。

  
その雰囲気は、図らずも高校時代の部活動を思い出させる。

あの頃、顧問に怒られるのが怖くて自発的なプレーが出来なかった俺たち。加点を狙う果敢な姿勢はどこにもなくて、失点を恐れ言われた以上の行動をしなくなるのだ。顧問の顔色ばかりを窺ってやがて考えることさえやめてしまう。やっているよりやらされているようになっていた。

思えばぱっと見明るい素振りの店内には溌剌とした雰囲気はどこにもなかった。ラーメン屋のような挨拶もどこか言わされてる感バリバリのものだったからこそ変に感じていたのだろう。

恐らく件の彼はそんな監獄の中で果敢に己を貫いた、自分なりの施術を試みてくれただけだと思う。日々の勉強の中で彼なりの知識や自信もあったのだろう。(下手だったが)、きっとこういう子が伸びるのだ。

 (恐らくここを辞めた後に、だけどw)

院長の言い分もわからんでもないが、やり方ってもんがある。少なくとも院の雰囲気を見ていると決して正解とは思えんのだがなぁ…

やがて何事もなかったように院長と交代するが、あんな事のあとですぐさま胡散臭い笑顔を振りまかれても僕の心は重たくなるばかり。

だが、皮肉にも腰は軽くなっている。そうして翌日、丹念に施術された足に強烈な揉みかえしが来てやり方はともかく、やっぱり院長は正しかったと思い直すのだw

コメント

  1. コピペ より:

    筋肉によって触り方が違うので
    特に脚と腕は難しいのですよ。
    肩や腰は大雑把でも筋肉自体が強いので大丈夫

    まぁ現場ネチネチは客としてはキツイですね

    投稿: kenji | 2017年1月26日 (木) 09時36分

    わかる。某ラーメン屋で意識高い系なのか客の前で怒鳴り散らしてビンタかましてる所に遭遇したのですがあれほど不味くなるスパイスはないと思う
    なんで店内でやるんですかね?外とかバックヤードとかでいいのに・・他店員へのみせしめか客にこれだけアツい思いでやってんすよ!みたいの見せたいのかな9割逆効果だと思います

    投稿: ヨシホイ | 2017年1月26日 (木) 16時56分

    ラーメン屋に行ったら店主と奥さんが夫婦喧嘩をしていてマジで最悪な気分になったことがあります。

    そしてそんな店が意外と潰れなかったりする不思議。

    投稿: のっぽさん | 2017年1月26日 (木) 17時50分

    客の前ではイヤですねー

    孤独のグルメはドラマ版
    大人気ですね。
     またウミ氏のグルメ系記事よみたいな

    投稿: 一男太郎 | 2017年1月28日 (土) 12時54分

    マル○ンの接客みたいだねw

    投稿: 神様 | 2017年1月29日 (日) 04時11分

  2. umi より:

    >>kenjiさん
    へー、なんかわかる気がします。そう考えると首なんかは怖いね><

    >>ヨシホイさん
    ビンタはちょっと無理だなw昔雀荘でやっぱり怒鳴られ小突かれてるメンバー見ましたが、ああいうのって本当どういうつもりでやってるんだろうか?

    仰るとおり、どちらにしてもパフォーマンスでも見せしめでもいい事ないっすよね。。誰も注意できる人がいないってのが悪いんだろうが、じゃあ客がクレーム入れるしかないのかな??

    >>のっぽさん
    夫婦喧嘩か、それならまだギリギリ許容できるかも…w
    ある意味で家庭的ですもんねwそういう雰囲気は悪い事ばかりではないだろうし。

    >>一男太郎さん
    孤独のグルメ新しいのやるたび妻が喜んでます!今やすっかり松重さんも「ゴローさん」の人ですねw アウトレイジでも深夜食堂でも、ゴローさんにしか見えませんw

    グルメ系は最近微妙にこなれてきて面白みにかけますが、それで良ければ…w

    なんて言いつつ、そういやこないだ久々にうみさん特製チャーハン作ったら非難轟々だったな(;^ω^)

    >>神様
    そうそう!あの過剰なわざとらしい接客w

    でも慣れてくると他がサービス悪いんちゃう?と感じちゃったりするから不思議><

    投稿: umi | 2017年1月29日 (日) 18時53分