9/11　　俺達のステージ

飲みに行って三件目、さて次はどこへ行こうかという所でとある場所を思い出した。

前から通りがかる度に気にはなっていたんだよな。一緒に飲んでた方がそういう話を出来る人というのもあって、この後普通にカラオケに行くつもりだったのを変更してそちらを覗きに行ってみる事にした。

（以前行ったガールズバー（メイドバー）とはちょっと違う･･･のかな？）

あそこはアニメを流していたもののカラオケとかは積極的に行っておらず、むしろメイドさんとアニメの話をするのがメインだったが･･･

とりあえず店の前まで行ってみると、ちょうど同じく店へ訪れたであろう客が嬉しそうに店の看板の写真を撮って軽やかに入店していった。

　「･･･ツイッターとかに上げてるんすかね？」
　「もしかしたらその道では有名なお店なのかもしれんな･･･」

いかにも、という感じの人だったがピンで気後れする事なく入って行くのを見るに常連なのだろう。若干ハードルが上がった感じがするが男は度胸、何でもためしてみるのさ！

　「いらっしゃいませ！当店はアニソン縛りのカラオケバーとなっております！」

ドアを開けると常連達が新参をまじまじと見つめるお約束の空気･･･とはならず、カラオケの大音量と女性店員達の合いの手が響き渡って誰も僕らが入ってきたことにさえ気付いていない。

やがて灼眼のシャナ？のコスプレをしていた店員がこちらに気付き、上記のセリフを述べつつ席へと案内してくれた。Ｌ字カウンターとソファータイプのＢＯＸ席が四つほど、それから小さなステージスペースのある案外広めの店内にはいち、に･･･四組八名のお客さんがいて、先ほど僕らの前に入って行った常連さんは当然のようにカウンターで一人風格を漂わせている。

　「料金は一時間二千円で、メニューに書かれてる物なら飲み放題です！ビールは+500円で飲み放題ですよ♪」
　「ほう」

一時間2000円で一部飲料を除いて飲み放題とな。プラス、カラオケは歌い放題（連続は禁止。歌い終わったら入れていいというルール）。店員のコスプレイヤー達が常に合いの手を入れてくれるし（当然ながらおさわりは厳禁）、客も盛り上がるような曲ならヲタ芸やら何やらノリノリで付き合ってくれる。

　「これは案外安いのでは？」
　「かもしれませんね」

そうしてドリンクと一緒にカラオケの曲を入れるデンモク？が回されてきた。最初の一曲は優先で歌わせてくれるそうなので「割り込み」可能らしいが使いますか？との事だ。

　「常連を差し置いてとんでもない･･･」
　「えーｗそんな事誰も気にしませんよぉ」

などと言ってるそばから、先ほどの常連さんがステージに立った。恐らく来てすぐに順番が来たということは間違いなく「割り込み」しているのだろうｗ　いや、ルールなんだからいいんだけどさ（；＾ω＾）

さて、恐らく常連である彼がどういう系を歌うのかでこの店の「流れ」がわかるというもの。

キャラソング的な電波系か、叫んで楽しむシャウト系か、はたまた一般人も知ってるようなスタイリッシュ系を選んでくるのか、そしてそれらに対する周りの反応は？

お手並み拝見とばかりに見守っていると･･･彼の入れた曲はな、な、なんと！！！

　「はぁりぃつめたぁ～　ゆぅみのぉ～！！！」

　（もののけ姫かーい！！！）

ウケ狙いなのかガチなのかわからん選曲をしてきやがって！！１！

特にウマくもないし、ウケ狙いにしちゃあ微妙すぎてどういう反応をすればいいかわからない。しかしそんな客達を余所に店員さんらがちゃんと合いの手を入れてくれるので白ける事はない。

　（なるほど、これは心強いなぁ）

とにかく歌って気持ちよくなればＯＫってことか（それがカラオケってもんだけどｗ）。金を払って合いの手を入れて貰えると思えば非常にわかりやすい。

となれば踊らにゃ損、損。

　｢ｾｲｯｾｲﾔｰ！！！」

選んだのはペガサス幻想曲。俺はいつだってシャウト系だぜ！！

　（やべえｗ思ったより気持ちいい）

この日は女性の店員さんが四名と店長？の男性が一人だったのだが、みんなうまい具合に合いの手を入れてくれるので非常に楽しい。常連さん？グループもタンバリンなど鳴らしてくれて、恐らく新参初回ということでいつもより余計に盛り上げてくれたのかもしれない。

　（をををｗ）

写真は一緒に行った方がオプションで店員さんとデュエットをしてもらいマクロスの「ライオン」を歌っているところ。

女性店員が歌ってるからなのか、ライオンという曲が良かったのかわからんがみんな想像以上にガチなヲタ芸をしていて噴いた。誰しもヲタ芸完備って感じだし、普段からライブとか行ってる人らが集う店なんだろうな～。

　「一時間があっという間っすね」
　「ほんとだ！？まだ二曲しか歌ってないのに」

客が増えてくると順番がなかなか回ってこなくて気付けば結構時間が経ってた！なんて事になってしまうが、客が少ないと今度は盛り上がりに欠けるのでそこらへんは一長一短だ。なんだかんだで歌い終わると「合いの手ありがとー！」的なハイタッチをして回る暗黙のルールがあるらしく、それがまた一体感を生んで次に繋がるという流れで、これがなかなか悪くないのだ。

最後に牙狼の「風～旅立ちの詩」を二人で熱唱したが最高に気持ちよかった。一応、アニソン縛りとは言え一部のパチソンはＯＫらしい。次があったらもう少し攻めてみたいな。真っ赤な誓いとか歌ったらすごい盛り上がりそうだ。

　「また来たいっすね！」
　「そぅ･･･ですね゛っ･･････！？」

大満足して店を後にしたが、たった二曲しか歌ってないのに喉が潰れていた。場の空気に引っ張られて限界を超えていたのだろうかｗ？

そして翌朝、起きると太股に謎の大アザが出来ていた。

まるでローキックを喰らったかのように太股の一部だけが赤く腫れ上がってるのだが、あの後一体何があったのだろう･･･全く覚えていないんだけど、いい加減酒で記憶無くなるのもヤバい歳だよなぁ（；＾ω＾）