4/19  ウオルボックスに獣 慟哭す

雨よけだったり配線隠しだったり用途は様々、見たことはあっても気に留めた事すらない人がほとんどだろうが、ウオルボックスというプラスチックの箱を職業柄触る事が多い。

中には通信設備だったりブレーカーだったりちょっとした装置が入ってたりするのだが、とある古びたアパートの外壁に付けられていたボックスをあけた時の事だ。

 ジィジィ・・・ ギィギィ・・・

 (・・・!?)

なにか古びたぜんまいが動いているような音が中から聞こえてくる。はじめ、時限爆弾のようなものを想像してしまい慌てて飛び退いたのだが、すぐに音のヌシがわかると同時にポトンとそいつが箱から落ちた。

 「ひィィいいィい(´;ω;`)」

生き物である。コウモリである。もっというとコウモリの赤ちゃん?である。

 ギギギ・・・ギギギ

あの大リーグボール養成ギブスが発する不気味なバネのような音は、コウモリの子供の鳴き声だったのだ。

 (しかし大丈夫かこいつ?)

割と高いところから落ちたぞ。見たところまだ子供・・・というより赤ちゃんっぽいコウモリ。よろよろと、落ちたダメージなのか発育不十分なのかは定かではないがとてもじゃないけど飛べる感じはない。ナルガクルガが死ぬほど弱って這うのがやっとという状態に見えなくもない。

しかし良かった!とりあえずは動いているので生きているようだ。不可抗力とは言え落ちて死んでしまったとあらば罪悪感でいっぱいになるところ、

 (が、この後どうするべきか・・・)

やはり元居たボックスの中に戻すべきなのだろうか。しかし、するとある疑問が残る。

 『こいつ、どうやって中に入ってたんだ??

という疑問。

ボックスは塗り直しの際に目立たなくさせるためだろう、外壁と色を合わせるためこれでもかと厚ぼったく塗られてしまっている。ペンキの粘着力は馬鹿にできたものではなく、こうなると開けるのにも一苦労で、実際ガッチガチに固まっていて相当に難儀したものだ。

一応ボックスには配線を通すための親指サイズの穴は開いているが、とてもじゃないがこの赤ちゃんコウモリが通れるほどとは思えないし・・・いったいどうやってあの箱の中に入っていたのだろう?

 (ん?コウモリって鳥類じゃなくて哺乳類だったよな?)

一瞬卵がここで孵ったのかと考えてみたがそんな事はない・・・よな?すると、、、ボックスが空いてたときに偶然産み落とされた・・・可能性はほぼゼロだなwボックスが開いてると言う事は傍に人がいたわけで、さすがに赤ちゃんを産み落としていく隙はないはずだ。

 (・・・となると、、やはり穴から入ったのか???)

蛸とか軟体動物ならわからんでもないが、コウモリにそういう特性があるのだろうか?それにしたって入ってからそこで暮らすに十分なスペースもないと思うが・・・

ともかく、弱弱しいながらもこうして生きていると言う事は、親が意図的に外敵から守るためにこのボックス内で子育てしていたという可能性があると言えよう。

しかし重ね重ね強調したいのだが、開いている穴は配線用の本当に小さなものしかなく、ちょうどこの画像の下部分程度のサイズしかない。

ここから赤ちゃんコウモリが入って?

親コウモリが定期的にエサを与えていて???

ブレーカーなどでゴミゴミしていたボックス内のわずかな隙間で暮らしていた??

 (んな事あんのか???)

この「んな事あんのか?」という思考に支配された僕はどうしてもこの弱った(ように見える)赤ちゃんコウモリをボックスに再度戻していいものか大いに迷った。

もしもあのボックスに入れるという選択が間違いだった場合、僕はこの子を「再」監禁して餓死させる事になってしまうのだ。

見捨てるという選択肢も勿論無い。というか見ている内にかわいくなってきて保護したくさえなってきた。

 (保護か・・・)

そういえば少し前に家の壁にぶつかって死んだと思われる鳥の死骸を市の鳥獣担当の課に処理してもらった事があった。くちばしが粉々に砕けてて、それはそれは凄惨な死に様だったようだが歩きスマホならぬ飛びスマホでもしていたのだろうか?

そんなわけで、そういう課があるのは知っていたので念のため調べてみると、静岡市の鳥獣保護課ではコウモリのような個体数が多い生物は保護してくれないらしい。そしてページ内では同時にこう綴られている。

野生鳥獣は、たくましく生きています。自然界の構成員である以上、ケガを負うこともあれば、他の生物を襲ったり他の生物に襲われたりと、厳しい生態系の一部として機能しています。例え、カラスやヘビに襲われるからといって、彼らも悪者ということはありません。その動物たちもまた同じ自然界で一所懸命に生きようとしています。

もし、ケガをした野生鳥獣を見つけても、直ぐに持ち帰らず、そっとしてあげてください。自動車や自転車、歩行者などが通行する場所であれば、ひかれないように脇や近くの茂みなどによけてあげましょう。その場でかわいそうだと思って、とにかく家に持ち帰ってしまい、どうしたらよいかわからなくなるのでは、かえって無責任な行為となってしまいます。そのまま世話を始めてしまい、人なれした期間が長くなり過ぎた結果、野生の中で生きていくことが難しくなる、といった状況にもなりかねません。

静岡県/自然保護課HP内より

 

 (なるほどなぁ)

襲われる事もまた自然である、か。

しかしどうなんだろう、今回のケースでは。僕がボックスを開けた事によって生まれた展開だ。それすらも大局的に見れば「自然」の流れなのかもしれないが、気付いてしまった以上何らかの策を講じたいと思う僕の気持ちもまた「自然」ではないか。

とりあえず持って帰るのと行政に保護してもらうケースは絶たれたので、後はこの子をどう放置していくか・・・なのだが、

 (まず現場の近くというのは当然だろうな)

恐らくであるが、世話していたであろう親コウモリの保護に期待できる。

しかしボックスに再度戻すかと言われると・・・迷った末に外に出して置く事にした。やはりどうしてもあのボックスにこのサイズのコウモリが入っていたことが釈然とせず、よしんば親の手によってあそこに入れられてたとすれば、やはり親の手で再度あそこに入れてもらうしかない。もしかしたら入れたはいいけど大きくなって出れなくなってた可能性もあるしね^^;

ネットで調べると親コウモリは赤ちゃんをしがみつかせて飛ぶ事が出来るそうなので、いずれにせよここから先は親頼み。

後はもう、蛇やら犬猫やら悪い人間に見つからないようボックスの傍にある茂みに隠しておくしかない。コウモリは超音波で会話するそうなので、恐らく先ほどからギイギイ鳴いているのも親を呼ぶ声なのかもしれない。
 

木の枝や草の上だと全く身動きが取れないようなので、ボックス近くの茂みがある付近で一応動けそうなところに置いてみる。このままだとさすがに熱いだろうと、日を遮るダンボールの屋根を作り、・・・・

 「ミカン喰うか?」
 「・・・(喰うかよバーカww)」

一応水と、なんとなく落ちてたミカンをあげてみたが当然食わない。前にコウモリが果実を食うって何かの番組で見たような気がしたが記憶違いだったかしら(;^ω^)?

 

 

 (んんん!???)

それから気になって三十分後、仕事を終えてから現場の様子を見に行くと、、、ものの見事にコウモリの赤ちゃんは消えていた。ダンボールの屋根が動かされた形跡はなかったので犬や猫の仕業とは思えないし、自ら這っていくにしても周囲は草の壁が立ちふさがっていてとても自力で越えていけるようには見えない。

 (親が保護してくれたと信じたいな・・・)

結果も経過もわからない事だらけで釈然としないのだけど、僕に出来る事はここまでだ。願わくば間違った選択をしていなければ良い・・・

・・・のだが、後日調べてみるとどうもあいつは赤ちゃんではなく成体だった可能性が高そうだw

日本にいるコウモリの中でも最もポピュラーなアブラコウモリという種はもともと小さく、弱弱しかったのは単に昼だったからということかしら(夜行性)・・・?

 (するってーと、あいつは何らかの方法でボックスを棲家にしていただけだったのかな?)

何時の間にか消えていたのも、力を振り絞って飛び立っていっただけなのかもしれない。

 (正直何も解決してないんだけどねw)

赤ちゃんコウモリじゃなかったと思うと途端にそこまで気に掛からなくなるのだから不思議なものだw

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