5/30  面白うてやがて悲しきメンバー業

 『客はメンバーに何を求めているのだろうか?』

先の客ブチ切れ事件で僕が感じた事なのだが、思えば雀荘でメンバーのバイトを始めてからというもの、他の雀荘に行ってもその店のメンバーに対しどこか客目線というよりはメンバー目線でその対応を見るようになった気がする。

 (大変だなぁ、モロヒも打てないこんな世の中じゃ…)

これは別段メンバーだからというわけではなく、どの職業に就いていてもきっと同様の事が言えるのだと思う。料理人が他店の料理を気にするように。とりわけサービス業なんかはその傾向が強いのだろう。

だからと言う訳ではないが、今は自分が客としてメンバーに何を求めていたかをすっかり忘れてしまった。

他の雀荘へ行っても、同業者に対してはどうしても同情票を投じたくなるというか、採点が甘くなるというか…舞台裏を知ってるだけに、その苦労を分かってあげたくなる場面というものが多い。

賞味な話、今の僕はメンバーさんに「不快にならない程度の接客」、それ以上の事は何も望んでいない状況なのだ。

 (これではイカンなぁ。同じ失敗を繰り返さないためにも、どれ、久々に客目線を意識して行ってみるかね)

そんなわけで、久々に一人でどこか適当な雀荘に入ってみる事とした。もちろん偽名で

 「いらっしゃいませー」
 「どもども」
 「あの…当店はお初めてで??」
 「いや、二年ぐらい前に… 」
 「あっ、そうでしたか。失礼しました^^お名前お伺いしてよろしいでしょうか?」
 「・・・あっ、はい…」

 (なんだっけ?)

二年前に確かにこの店に来ていたのだけど、そういえば何と名乗っていたかを思い出せない。僕は雀荘で本名を名乗る事が滅多になく、大体が知る人ぞ知る麻雀漫画のサブキャラの名をその時の気分で名乗っているんだけれど、しかしその数が多すぎて思い出せない。

 (う~ん…確か)

 「稲垣…です」
  「はい、稲垣様ですね!当店のスタンプカードとかはお持ちで…?」
 「あっ、はい…確か…」

そうして、カード入れを探るとお目当てのカードが出てきたのだけれど、氏名欄には違うキャラの名前が刻まれていた。アウチ!

 (しまった!!稲垣名誉八段じゃなくて京都の小林の方だったか!!)

慌ててカードを隠すも…

 「あっ、今のウチのカードですよ^^」

目聡くも見逃さない店員A。くっ、てめえ…空気を読めや。

 「いやあ、はは。結婚して苗字が変わりまして」
  「へー」

おかげでこんなこっ恥ずかしい言い訳をする羽目になっちまったじゃねーか!!いつの間に俺は婿養子になっちまってんだぃ!!!

 1・客はメンバーに空気を読む事を期待している

さて、気を取り直して卓につくと別の店員が本走に入るらしい。うむ。別にどっちでもいいが、トラブルが起きた際なんかは店員が実際に目の前で状況を見ていてくれたほうが面倒がなくていいからなぁ。…って、お!これもメンバーの求められてる事だな。

 2.客はメンバーのぬくもりを求めてる

実際、それだけに飽き足らず、メンバーはおとなしくしておけ!とか、メンバーは汚い仕掛けをするな!とかいう時代錯誤も甚だしい輩が未だ数多く存在するのだが、それはさすがに僕がメンバー目線での贔屓目に見るわけではなく、一人の人間としてそんな事は求めていないと、また、求めるべきではないと声を大にして否定したい。メンバーは卓についたらもはや一人の客として扱うぐらいの態度でも全然問題は無いと思う。まあそれはさすがに論理的に無理だとしても、打ち方に注文をつけるなんて持っての他だ。第一そんなんで勝って嬉しいのだろうか?既にそれは麻雀とは別の遊戯になるという事をわかっているのだろうか?

個人的には手を抜かれる方がよっぽど不快なんだけどね。

 「リーチです」

 (っと)

ここでメンバーさんが徐にツモ切りリーチを繰り出した。宣言牌は六筒。メンバーさんが二萬を手出ししつつもリーチを自重した一巡の関連牌としては、無筋の八索が出たことと、僕が河に三枚目となる五萬をツモ切りしたぐらいだ。果たして何が彼にリーチを決断させるキッカケとなったのやら…

 (これでカン三筒とかだったら笑っちゃ…)

 「ロンです!」

一萬二萬三萬三筒三筒五筒六筒七筒二索三索四索八索八索  ロン三筒ドラ一萬

 (ってマジかよ(;^ω^)…)

まるで安全牌を切り出すかのような速度で隣のおっちゃんが当たり牌を放出した。

 「「ぎょえー!!あるの!?」」

叫ぶおっちゃん。

 (あるの!?じゃねえよ!!!)

というか、出す方も出す方だが、曲げる方も曲げる方だ。和了連荘の店なので、百歩譲ってファーストテンパイで曲げないのは理解も出来よう。しかし、だ。

 (な、なんなんだそのツモ切りリーチは^^;)

ツモ切りリーチを見ればある程度その人のレベルがわかるとは、現代麻雀における一般常識のようなものである。即リーの有効性が叫ばれる昨今。それほどツモ切りリーチというのはセオリックに打った際に使われる状況が限られるものなのだ。

一番一般的な理由として、場況に変化があったからという例が挙げられる。カンドラが増えたから、壁が出来たから、手牌変化の目が消えた…若しくは薄くなったから、筋に掛かったから、etc…しかしこれらは一般的だが、それゆえ読みの材料にされやすい。また、せっかく先制リーチが打てる場面にも関わらず、リーチを打たずに相手の手を自由に進めさせてしまっているという点においてもそのヌルさが指摘されよう。余程特別な事情でも無い限り意味の薄いツモ切りリーチを打つ奴はデジタルアウツと言われても仕方が無いのだ!

ちなみに、ツモ切りリーチにはその他にこのような理由が考えられる。

  ・ダマにする理由が無くなったから(親リーが入ったとかね)
 ・相手の手が短くなったのを見計らって(愚形が多い)
  ・モロヒッカケが目立つから一巡おきました(お、おう…)
 ・同順当たり牌が出たからノーマークだろう!!(お、おおう…)
 ・一発消しを避けてみました(先生っ!!!)
  ・何順か我慢したけどもう限界です(よく我慢したね!)

あくまでこれらは「セオリック」に打った場合に限るわけで、意味も無くツモ切りリーチを掛けるおっちゃんという種族は今も存在する。(例でいうなら最後の我慢の限界というやつ)。舐めてかかると何でそれでツモ切りリーチ??みたいな手にぶつかる事もあるのだけれど、そういう意味でもツモ切りリーチには「人読み」も重要なファクターとなる。

上手い人なんかはこのツモ切りリーチの特性を逆手に取って、その理由を考えてくれる人を狙ってワザとツモ切りリーチをしたりもするんだけど、それにしたってその間のロスで失うものとの天秤にかける程の効果があるかと言えば怪しいものだ。

話を戻そう。今回メンバーさんが掛けたリーチを見て僕は愕然とした。

長ったらしく説明した通り、ツモ切りリーチ一つ取っても相手が何を考えてそういう行動を取ったのかがこれだけ想像できるのだ。僕にはこのメンバーさんがタイミング的にも、どうしても聞くに耐えない理由でツモ切りリーチを掛けたようにしか見えなかった。

また、「当然出るよね」と、そう言わんばかりのドヤ顔にコーヒーを噴出しそうになる。

 (…おうおうおう!)

ここで僕は知った。少なくとも僕はメンバーに対し「ある程度の麻雀」とやらを求めている事を知った。この考えが普遍的であるかどうはわからないが…

 3.客はメンバーにある程度の麻雀技術を求めている

 (しかしアレだな…)

こう考えると、どこまでが「ある程度の麻雀」なのかという議論が湧き出る。僕にとってのある程度の麻雀とは最低限のデジタル打法を指すのだけれど、果たして他のお客さんは… 例えばこの間ブチ切れたお客さんなんかはどうだったのだろう?

「ある程度の麻雀」というのは、個人によって、また時代の流れによって変わってくる。メンバーのモロ引っ掛けリーチを未だに悪だと疑わない人間もいるし、実際にそれを禁止している大手チェーンだってあるぐらいだ。僕からすれば笑い話なのだが、それぐらいここ数年で急激に麻雀のセオリーが変わりつつある。そこに意識のズレが生じているのは紛れもない事実である。

最近のセオリーとなりつつある乞食麻雀だって、受け入れた人間からすれば当然でも、見る人によっちゃあそれこそ「見るに耐えない」麻雀なのだろう。

残念ながら、強い麻雀と面白い麻雀というのを両立させられる人間はほとんどいない。結果を求めるか過程を求めるかでまた道中にズレが生じる。

そういえば某団体のトッププロが超デジタル打法の若手に対してこんな事を言って大問題になっていたっけ。

あとの3人はこの2人に比べたらまだまだ甘い。仕掛けも多く隙がある麻雀なので問題にならないだろう。とにかくプロとして品のある麻雀を打ってもらいたい。チー、ポンが激しいのは見ていられないから、そんな品のない打ち方はつまらない。

うーん。難しい。贔屓目に見ているはずの僕でさえ、ちょっとした事でここまで思うのだ。不快になるならないは別にして、思うところはたくさんある。
 
 『客はメンバーに何を求めているのだろうか?』

この冒頭のセリフ。これだけ聞くとなんと殊勝な心持ちかと賞賛されかねないが、実際この言葉の裏には

 『客はメンバーにどこまで求めてんねん』

という皮肉が混じっている。メンバーの苦労を知ってる僕ですらコレなのだ。多分あと数十数百は下らない要望、意見がそれぞれお客さんの胸の内にある事だろう。その全てに応えられるなら、既にどこかの五つ星ホテルで働いている。

その昔、メンバー業を男芸者と例えた人がいた。なるほど、言いえて妙である。風刺的な響きがいい。

メンバーの難しいところは、芸者をやりながら選手をやらなければならない点に尽きる。この矛盾する仕事内容に於いて、万人を満足させる事など果たして可能なんだろうか?

 (ある意味極めようとしたら相当難易度高い職業だよな(‘A`)…)

今更ながら、実感を持ってこの職種がサービス業なんだという事を知る。店長の言葉が胸に染みる。今はまだ答えが出せないけれど、バイトを続けるうちは意識しつづけよう。

とりあえずは、明らかに偽名だろって思っても黙っている所から始めるかな。麻雀の内容に関しては、時代の流れに期待するしかあるまい。

コメント

  1. ( ・ω・)y-~~~~ より:

    今やドラッグストアどころかイオンでも、普通にジャンプとか本が売られる時代。
    自販機も100円とか目につくようになったし、散髪屋、本屋やCD屋の次はコンビニが消滅する時代か。。。

  2. 小島 より:

    umiさんの力で訳の分からないモギリー一発ツモをチョンボにするようにして下さい

  3. kenji より:

    メンバーに求めること
    明るくはきはき対応
    強いこと
    客の話はちゃんと聞くこと
    かなぁ

  4. 虚無 より:

    難しい話ですね。当然ですが、全ての人間の期待には答えられません。基準は十人十色で、人の要求にはきりがありません。何よりも人一人が意識を変え、自分なりのベストを目指したところでメンバーの意識まで変えることも難しいですよね。しかし、難しい事だから変えられないし、ベストなんて存在しない、と割り切るのではなく再び客の目線に立ち、考えに柔軟性を持たせるうみさんは確実に麻雀界にとって有益な人物だと考えています。(雀荘行ったことありません☆)

  5. 椰子 より:

    メンバーさんに求めたいのはある程度の雀力・分け隔てのない接客態度かな。
    モロヒしようが全く問題ないと思いますが、ツモ切りリーチの宣言牌絡みの引っ掛けはちょっと雀力を疑いますね。
    強いて言えば「麻雀小僧」のまー坊みたいなタイプとは同卓したくないかなw

  6. より:

    芭蕉なんだろうけどゴチンコのイメージが強すぎるせいで滑稽です

  7. ひげ より:

    私がバイトしてた雀荘ではメンバーが勝つと機嫌が悪くなる方も結構居ましたね。
    お金がかかってる以上仕方のない事だとは思いますけど、露骨すぎて胃が痛くなってましたw年配の方メインだったので余計にそうだったのかもしれませんが。資産20億持ってる(らしい)おじいちゃんだけはいつも優しかったですw

  8. より:

    同感です。接客業なのに勝負しなきゃいけない矛盾を解決するのは無理じゃないかとおもってるのですがw
    負けを覚悟してるある程度打ちなれたお客さんと、ただやってるのが楽しいだけの年寄りのかた(主におばあちゃん)には打ち方を変えてるのですがw

  9. パチエル より:

    メンバーが1000点あがるだけでも、「ツマんねえ麻雀打つな!」とか怒り出すキ○ガイ客もいるし、なかなかに難しい仕事だなと思います。
    個人的には、モロヒも順位変わらないオーラスのアガリも、気にせずに自由にやってほしいとは思ってます。
    あとは空気読むことくらいかな。。。

  10. ( ・ω・)y-~~~~ より:

    生ポ 問い合わせが凄いらしいね!
    誰でも申請すれば貰える!
    オッキーさんも貰っておきなよ!人民の権利だよ!権利!

  11. umi より:

    >>( ・ω・)y-~~~~ さん
    ツイッター・mixi・フェイスブック・2ch
    さあ、選ぶがよい。 
    >>小島先生
    たまにツモ切りリーチをモギリーって言う人がいるけど、それを聞くたびに通っぽいなぁと憧れませんが思います。チョンボには出来ないけど一発は無効にするぐらいの運動はしたいですね
    >>kenjiさん
    けっこうみんな「強い事」を求めてるんだねー。それはいいとして、じゃあ強いんだから手加減しろって論法にいってしまうのは何とかしてほしいねw 
    >>虚無さん
    >麻雀界にとって有益な人物
    なんかワロタw なんか・・ねw 麻雀界ってピンキリ激しくて、プー太郎崩れみたいのも多いんですが一部の人たちの熱意、誠実さには本当に頭が下がります。未だ黎明期だと思っていますが、今後そういう方たちがトップに立つ様になればこの業界も変わってくるかもしれませんね。残念ながら僕は麻雀に対する情熱はそこまで・・^^
    >>椰子さん
    まー坊みたいなタメ語はさすがに無理だけど、麻雀の内容だけならああいうのは今はゴロゴロしてますよ。初めは嫌われるけど理解されればOKって感じ。そこが大変なんですけどねw嫌われもしますし、でも嫌われる=やっぱり強い麻雀なんですよねー
    >>ピスタチオさん
    え?何^^;?ググったらグルグルが出てきたけど作中そんなのあったっけかw?
    御意!しか記憶にないな。
    >>ひげさん
    うちはその点ではかなり客層には恵まれてて(そういう店作りの結果なのかもしれませんが)、不機嫌になる人はあまりいません。茶化されはしますが、それも芸者仕事のうちですしね・・・
    >資産20億持ってる(らしい)おじいちゃんだけはいつも優しかったですw
    あるあるwでもこういう人ってやっぱり麻雀ゆったりしてるから時折チーポンしてて申し訳なく思っちゃうときありません?ほんと、矛盾した職業だで
    >>星さん
    問題なのは打ち方変えて損するのは誰だ!って所に集約されてますよね… 理想を言えばメンバーの負け分をお店が全額負担して、その上で別のところでお金を取ってそれに対してお客さんが喜んでお金を払って回る店…なんだけど、無理ぽ。場代5000円ぐらいのピン雀なら何とかなるのかなw
    そうなると裏メンが一番効率いいんですよね。表メンバーが卓に入らなければいいんですから。でもそうすると不自然&人件費が…
    >>パチエルさん
    >メンバーが1000点あがるだけでも、「ツマんねえ麻雀打つな!」とか怒り出すキ○ガイ客もいるし、
    あるあるww さか○系列が業界では一番そういうメンバーの制約に厳しいって聞いたことがあるんですが、確か東一の1000点禁止だっけかなw遥か昔になんじゃそれ!って思った記憶があります
    空気は… 
    >> ( ・ω・)y-~~~~ さん
    そんなん貰うぐらい見境無いならとっくに打ち子雇ってますがな

  12. 匿名 より:

    ツモ切り引っ掛けリーチでも和了れるレベルだってわかってるなら、別にいいと思うけどねぇ。

  13. umi より:

    黒澤さん 「くっ、そんなリーチをかけてる奴に成長はありえねぇ…」
    と思ったのですが、確かに面子に合わせた打ち方って点じゃそう言われると返す言葉もないな…