1/12  保護者Xの献身

珍しく18時前に帰ると妻が望外の態度で迎えてくれた。

 「なにー!?早く帰ってきてくれたの、うれしい!」

 (!!?)

いつもなら「げ!?はやくない?」が第一声のはずである。特に妊娠してからというもの、コレまで以上に風当たりが強くなっているというのにこれはおかしい。ポポ、シッテル。コレ、ワナ。

  「19時からPTAの選考委員会だからよろしく♪」
  「まあそんなとこだろうな(´・ω・`)」

さすがに身重の妻をクッソ寒い校舎に出向かせるのも気が引けるので不承不承ながらGO。しかし選考委員と言われても何をするのだろうか。まあ僕を行かせる時点で前みたいに顔を出しておけばOKなんでしょ

…と思うも甘かった。

 「えー、本日は新一年生含めた今後のPTAの役員補充という事でして、選考委員として集まってくださった皆様には、どなたか役員になってくれそうな方を推薦していただきたく…」

 (あっ、これ割とガチなやつだ(;^ω^))

どうやら今年度で三人の欠員が出るらしく、その穴埋めをするらしい。いつのまにウチが選考委員になっていたのか知らんが、聞けば「小学校」毎の派閥があって、──娘の学校は近隣四校から人が集まるマンモス校…というか児童数が少ないのでまとめられてるのだが、大体各校からバランスよくPTA役員というのは出すものらしい。

そして今回の欠員で娘の通っていた小学校から選出されているPTA役員の数が減るのでその補充、という事らしい。つまり選考委員なんてのは単なる呼び方で、この日集められたのは同じ小学校の子を持つ親たちなのだ。そしてその繋がりの中で誰かを推せと言っている。

と言うか誰も知らねえwので僕はどだい初めから役に立ちはしないのだが、周りにいる親御さんらも魔女狩りのような雰囲気に声を出せないでいると…

PTA会長の側近のようなお調子者風の男(誰かの親なんだろうなw)がアレやコレやとPTAの魅力を語り始めるではないかw

 「まず親が学校側から覚えて貰う事で子供も覚えてもらえる。他学年の先生とかからも声を掛けられたりして、結果的にそれが子供の環境をよくする事につながります」

 (なるほど!)

 「それから、PATにどうしてもいい印象を持たれないと思いますが、実際やってみると本当に大したことはしませんよ!なぜなら、本気でやってる人が必ず何人かいて、ここだけの話そういう仕切りたがり世話したがりの人がほとんど動かしてくれるんです

 (へ~)

 「そして今年中学二年になるお子さんを持つ親御さん!今年一年やれば来年は役員免除権利を貰えるので、何かと忙しくなる前に確実に済ませちゃう方がいいかもしれませんよ!?今なら楽チンな係を回してあげられます!」

 (ほうほう(゚∀゚))

これらはほんの一部だが、子供の頃に漠然と感じていた正体不明の「PTA」の見方が少し変わる思いであった。当然ながら自分の子供が通う学校の運営に携わるのは各々の親の「義務」であり、PTAは当たり前の事を当たり前にこなしていくために必要な団体なのだ。言われてみればその通りだが、あまりにも自分とは無関係のように思っていた事に気付かされてハッとさせられる。

そうなのだ。何時の間にか僕だって当事者になっているのだ。

 

 (まあやんねーけど(´・ω・`))

毎月集まって会合とかとてもじゃないが無理だ。特に今年子供が生まれる予定のウチにはそんな余裕はないので蚊帳の外を決め込むが許しておくれ。会場内でも白羽の矢を立てられ売られたお母さんがいたが、深刻そうに「うちはシングルで…私が稼がなきゃ…」などと若干重い雰囲気になってしまい以後は硬直状態へ。そうだよなー。みんな出来ればそんな面倒な事やりたくないわな。

…そう思えばこそだ。やってくれてる方へは頭が上がらない思いでいっぱいになる。

今までPTAに入るなんて物好きな人達だと超他人事で眺めていたが、彼らだって好きでやってるわけじゃないだろう(一定数好きでやってる人もいるようだがw)。なんなら報酬を払う制度など作ってもいいかもしれない。少なからず時間を使わせているのだ、なら何もしない人が代価を払ったっていいじゃないか。

思い返せば近所のおじさんが昔少年団のサッカーのコーチなどをやってくれてたけど、あれだってとんでもない重労働だ。休日を試合で潰され平日夕方は毎日コーチ業。自分の時間なんてあったもんじゃない。今だって会社に少年野球の監督をしているおじいちゃんがいるが、彼らの献身…その原動力は果たしてどこから来ているのか。

ひとえに子供の未来を想う「教育」の心なのだとすれば、それはなんと素晴らしい事か。

 (まあ俺はやんねーけど(´・ω・`))

結局「役員決まるまで帰れま10」状態になり、痺れを切らしたお母様方が渋々ながらも立候補してくれたときには時刻は21時を過ぎていた…

 「ありがとう、ありがとう」

立候補してくれた人にどこからともなく拍手とお礼の声が聞こえてくる。ある人にとって人生を捧げるに足るものが、ある人にとってはまるで罰ゲームのような扱いにどこかモヤモヤしたものを抱えながら、誰よりも早く会議室を出た。

事ここに至り、未だ僕には他人事としか思えないのだw

コメント

  1. 三重県人 より:

    キラキラな名前の子の親は出席率が低いとかあるんですかね?

  2. umi より:

    あーwそういうの意識した事ないけどあるのかな?
    そもそも誰が誰の親か知らないので現状調べようがないんですよw