「ほれ、うみ」
そう言って、大きな紙袋をくれた師匠。中身はさらに物々しいロール紙で包まれている。N.HOOLYWOODと、改めて紙袋をみればそのような名のロゴが入っていた。ファッションには疎いのでよくわからないが、なにか名のあるブランド的な雰囲気は伝わってくる。
「こ、これはまさか!?」
「おうよ、誕生日プレゼンツ」
「おお!」
許可を取って開けてみればパーカーが入っていた。僕が普段着ている服とは違いすぎる生地の手触り。生地の事は全くわからないけど、高そうだという事はわかる。
「ありがとうございます!」
「うむ」
そういえば、男性からこんなまともなプレゼントを貰ったのって初めてかもしれない。九月に師匠の誕生日にブックカバーをプレゼントしたのだけれど、果たして何倍返しになってしまったのか。
気持ちの問題といえども、師匠も師匠の立場があって、気持ち以上の物を返さなければいけないという事は道理としてわかっていた。それを期待して・・・というわけではなく、むしろそれが重荷になって悪いかなとは思ったが、一応形としてプレゼントは贈っておいた。
そうして先週、予想通りにこういうものが返ってきたわけだが…
(女子がバレンタインに物を贈るときってのはこういう気持ちなんだろうか?)
してやったりというわけではないし、なんだろう、罪悪感とも違う。当然と言えば聞こえが悪いが、こういうものなんだろうなという予想通りの結果に落ち着いての納得感はある。
ホワイトデーに三倍返しを当然のように思っている女子の図、というものがこれまであったが、彼女たちももしかしたらこんなモヤモヤした気持ちでいたのかもしれない。図々しい奴らだなと今まで思っていたけれど、世間の流れ的に仕方の無い部分を耐えていたのだとしたら悪い事をしたものだ。
さて、『プレゼント』。
ここ数年で僕が麻雀以外に師匠から学んだ事の一つである。気持ちを伝える手段としてコミュニケーションの一部として、大別すればパフォーマンスの一種になるのだろうが、こいつが想像以上に他人の心をくすぐる事を学んだ。
菓子折りの一つでも…という言葉はあながち嘘ではなかったのだ。
僕はこれまで贈り物という文化に懐疑的ではあった。物でしか気持ちを表現できないのかとか、どこか芝居じみているとか。
しかし色んな人と接するようになってわかったのだが、残念ながら日常の付き合いに於いて、大半の気持ちというものは物で表現するしかないのだ。いくら感謝の言葉を述べたって、菓子折りの一つすらない言葉に何の重みがあろう。それすら用意できないとは…と、残念ながらこれが現実。
なればパフォーマンスも必要になってこよう。
思えばお中元やお歳暮…もっと言えばお土産なんかもそう、長く続いてきた文化というにはそれなりの理由があるのだろう。
打算の入り混じった嫌な捉え方に聞こえてしまうかもしれないけど、きっと贈り物文化というのはそういうものなのだ。そしてなぜこの文化が今日まで続いているかといえば、費用対効果がかなり期待できるからに尽きるのだろう。
僕はこれまでそこに気づいていなかった。少しの金を惜しむ愚か者だった。
プレゼントは品物ではなく、既成事実を贈るものなのかもしれない。たとえどんな感情の篭った贈り物だろうが、それは見えないしわからない。残るのは贈られた側の『プレゼントを貰った』という事実だけ。
賄賂…これこそ一番聞こえが悪いが、似たようなものかもしれない。無論全部が全部、打算の入り混じったものではないし、それだけじゃあ余りにも寂しい。だけど、どんな気持ちが篭ってようが、結局のところ貰った側も当然悪い気はなしないという事で、win-winな関係。使わない手はない。
今回、プレゼントを貰う側になってそれをより強く実感した。何を今更と思う人も多いと思うが、僕としては目から鱗の経験であった。そういう事を諸々含み、だけどやっぱりこうも思うのだ。
打算抜きで純粋に贈り物をしたいと願える人が、今後どれだけ出来るだろうか…と。
コメント
ダメ!ルンペン!絶対!師匠からのありがたい贈り物ですね
某有名野球選手のお言葉を紹介します。
「誠意とは言葉ではなく金額」
いいこと言うねー
僕もつい最近気づいたことだから、なんかジーンときた
TV買いに行ってきたのに何故かキンドル買って出てきてもうた。。。。(;´Д`)
まさかココでN.HOOLYWOODの名を目にするとわ!
あの変なワッペンだらけのジャンパーに合うかなぁ?
Win-Winな関係言いたいだけちゃうんかと小一時間(ry
とある生物はメスに求愛の印としてエサを持っていったりしますよね?
人間の場合だとダイヤの指輪とかですが・・・
で、ここでなんでダイヤの指輪なのかと考えてみると
別に女性は光る石が欲しいわけではなく
光る石が高価な物だから喜ぶ訳である。
もちろん、お互いの気持ちにもよるだろうが
贈り物は高価なもの、珍しいもの がいいとされる。
又、相手の好きなものや実用性のあるものも
同様に好まれる傾向にある。
補足として
高価or珍しいものの場合
両方とも非日常のものであるので人間の好奇心や知的探究心を満足させる。
相手の好物or実用性のあるもの
好物をもらって顔をしかめる人は少ないだろうし
実用性のある、今回のようなパーカーなどは
受け取る側のことを考えて贈られたと
贈られた側が理解できることによって
自分は大切にされているという感覚が生まれる。
全く情報が無い場合は菓子折りがいいだろう
その人の家族や会社内、またその会社に来るお客さんに出すお菓子が
基本的にいくらあっても多すぎることはないのだ
つまり菓子折りが一番はずさない手土産となるだろう。
抜粋:日経ビジネス
という妄想が3秒でできあがった^p^
>>ピスタチオさん
着ていく場所がない件
高いと思うとヤニ臭い場所なんかに来ていきたくなくなるね><
>>椰子さん
なんか調べたら言葉とは裏腹にいい話だった。
>>名無しさん
お互い見苦しくない程度に活用していきたいですな!
>> ( ・ω・)y-~~~~さん
あなたのコメを読んでいる限り別段不可思議な行動でもないですよw
>>通常ROM専モードさん
んー。そのジャンパーって僕のいつも着てるヤツの事指してるっぽいけどw結構身近な知り合いさんっぽいな。。
N.HOOLYWOODの通販サイト見たら来年はもっといいの贈らなきゃって気になりました。こうして次は次はと連鎖が続いてくのはお互いにとってよくないけど、一度走り出すと止められないもんなぁ('A`)どうしたものか。
>>しっちょさん
どっちかというとその言葉嫌いなんすよねw 語呂がいいから、つい…
>>kenjiさん
すごいね!どっかの中学生の考えたような文章書かせたらkenjiさんの右に出るものはいないぜ!
エヴァQ観て来ました。
色々飛躍しすぎてわけがわからないよ・・・という感じです(;´Д`)
中高生の現代文に出てきそうな記事ですね!
>>椰子さん
考察スレ見るとさすがだな~って意見たくさんあって楽しいですよ
>>kjkouさん
でも教科書にこんな事書いてあっても多分聞き流してたと思うよ。偉そうに書いておいて何だけど、こういうのって実感を伴って初めて気づく類のものだと思うし、また全ての人に当てはまるって話でも無いしね。とりあえず俺は素晴らしい事だと思ったよ。