別に高尚ぶった会話をしようってわけじゃないのだが、
『援デリの少女たち ─著/鈴木大介』
エロ目的で手に取ったというわけではないが、援デリ?なんぞや、との興味本位で読んでみた。昨今方々で見られるようなデリヘルの実情でも赤裸々に語られているのかなと思っていたのだが、そうではなかった。そんな生ぬるいものではない。風俗業界の『底』が本書では語られている。
援デリとは読んで字の如く「援助系のデリヘル」の事を言い、これまで個人間でのやり取りであった援助交際に業者が介入してきた形態をそう呼ぶそうだ。風営法が変わり営業が難しくなったデリヘル店等が出会い系で客引きするようになったのがキッカケらしいが、言うなれば素人のフリをした業者が客を引き、抱えた女の子を派遣する…受付の無いデリバリーヘルスのようなものか。裏で操る業者の存在がバレれれば管理売春で捕まってしまうため、当然風俗営業の届出など出さない。
完全な違法行為であるが、『そこ』でしか生きられない少女達がいる。
本書はそんな少女達にスポットを当てたルポである。決して刺激や遊ぶ金欲しさのための行いではなく、生きるために援デリに手を染める少女たちの生の声…
と、別段僕はここで風俗がどうだの犯罪行為である援デリがどうだのを語るつもりはない。そんな資格は元より語れるだけの学もないし、何より、声を大にして言いたいだけの意見も持ち合わせちゃいない。
ただ、そんな僕でも本書を読んで非常に衝撃を受けた章があって、そこでは「身体・知的障害者」の性産業、風俗業界との繋がりがテーマとなっていて…
「障害ね。AVの世界じゃまあ、珍しい話じゃないよね。面接で見た瞬間、こいつ変だなってのはいっぱいいるしさ。文字が書けない、契約書は読めない、簡単な受け答えが出来ない、それこそハシすらまもとに持てないとかね。そんな女優はザラにいる」
「ザラっすか。でもAV観てもわからないですよね、それ」
「あー、観るAVが違うんじゃない?簡単な話で、そういう女はいわゆる三大NG(ア○ル・ス○トロ・ハードSM)の撮影現場に行けばいるよ。他の女優が嫌がる現場に行けばゴロゴロしてる。ス○トロの現場に出ている女優なんて、たぶん半数は障害者じゃない?」
これはその章での筆者と自称「障害者専門スカウト」との会話の抜粋なのだが、
(ほえ~、考えた事も無かった…)
恥ずかしい話だが、これを読むまでこういう発想が一切浮かんでこなかった。今でこそ「障害者に対する」性のサービスの話が時折上がる事もあるが、逆…そう、「障害者によるサービス」。言われてみれば、確かに無いとは思えない。
(……う~む)
この章を読んでの感想は正直良いものではなかった。差別、同情と、色々と言われるかもしれないが、この胸糞の悪さはやはりそこに端を発しているのだと思う。これが「搾取」でなくて一体何なんだろうと。いわゆる社会的弱者からすらも搾り取ろうというのかと、読み進めれば進めるほどに暗鬱たる気持ちで一杯になる。
しかし、そんな僕ら(筆者)の想いとは裏腹に、筆者の取材した傷害を持つ女性達は意外な程にあっけらかんとしている。施設に縛られない自由を謳歌している。援デリが彼女らの救いになっている面もあるというのだ。見る場所が違えば景色も変わるという事だろうか。全ての女性がそうというわけでは当然ないだろうし、問題は一つも解決していないが、何だか少しだけ救われた気持ちになった。本書の締めも自立していく女性を追う事でそういう方向になっている。
…と、メッセージ性が強くとても素晴らしい内容の本なのだけど、タイトルで損をしている感は否めません。電車内でこれを読んでいて、隣の人から白い目で見られた事は数知れず^^;皆様も興味があったらぜひお読みください。
コメント
カバーくらいかけようよw
しかしこれこそ搾取はあるものの
ウィンウィンの関係なんじゃないだろうか
こういう系のルポ非常に興味あります。
昔「小人プロレス」という見世物があって、「差別的だ!」という意見が多数出てそれ以後一切やらなくなったのですが、当の小人症の方たちは「じゃあ自分たちはどうやって食っていけばいいんだ!俺たちの食い扶持を奪うな!」と怒っていたのを思い出しました。
なかなか難しい問題ですね。
>>kenjiさん
勿論カバーはしてるんですけど、章毎のタイトルなど、太字で見やすい部分にさえ未成年がうんたら、デリヘルがうんたらって書いてあるからねーw
ウィンウィンと言うのはこの取材した極一部の障害者女性達だけであって、現実には障害を利用せんとする第三者の介入が問題であって、例えば障害者の娘を親が売る、なんて話も取り上げられています。知的障害者と聞いた際に、まず本人の自由意志が反映されているかどうかと思いませんか?僕はそういう理由で嫌な気持ちになりましたが、中には取材対象のような方もいるようですね。こういうルポあってこそだと思いました。
>>一男太郎さん
話には聞いた事があります、小人プロレス。どちらの言い分もわかるような気がしますが、一度こういう声が上がった後の事を考えるとやはり… 声が上がるようになるともう無視はできませんもんね。かと言って声が上がらないのも問題というのだから難しい><
本書においても障害者の件は触れて大丈夫かとの葛藤はあったそうです。ただ、筆者の場合は声を上げるだけでなくその後の対応も考え福祉関係、NPOなどともコンタクトを取っているようなので一先ず同じ道を辿ることはなさそうですよ!
うむ。なかなか興味深い本ですな…って、ちょwおまっwwなんて本読んでんすかw
これ車内で読むとかツワモノすぎるwww真似できねぇw
思わず書店で探してしまったじゃないか。
タイトルが既にエロ小説としか思えないですw
実際そこで体張って働いてる女性達は他に選択肢がなくてやってるんだろうなあと思うと複雑な気持ちにはなりますね。
バッキー事件とか凄惨な事例もあるし。
>>しっちょさん
一応カバーかけてますからね^^; それでも章毎のタイトルが卑猥すぎて隣にOLさんなんかが座るとはぁはぁ…
>>椰子さん
表紙も官能小説っぽいですよねw
バッキー事件ての僕は知らなかったんですが、今も社名を変えただけでビデオ製作を行っているようですね(´・ω・`)こんなん氷山の一角で、この業界もっと酷い事がたくさんあるんだろうなぁ。