4/5　　堕落回顧禄　その2

【回顧その2】　流星

シャララララと、実際音は鳴らないのだが擬音で表すならば落雷というより流星のようなその光は、瞬く間に僕を魅了する。授業中も部活中も12連ＬＥＤが頭の中で流れっぱなし、左から─右へと。

今でも恥ずかしい記憶としてハッキリ覚えているのだが、この頃友人から一番面白いゲームは？と聞かれた際に僕は「ＪＡＣゲーム（ｷﾘｯ」と答えたぐらいには頭がイッちゃっていた。

しかしはて、一体どこにハマるぐらいの体験があったのかと言えば謎である。初打ちは負けたのだ。よくある初打ち大勝ビギナーズラックでハマってしまった口ではない。初打ちは負けたのだ…と言っても所詮高校一年生の初打ちなので、確か数千円打って当たらずヤメだったかどうだったか。

だからこそ余計に不思議なのだが、その後どういう気持ちで二戦目に臨んだのだろうか。確かに二戦目で勝ったのは覚えている。一戦目で数千円負け、二戦目で一万ニ千円の勝ち。当時の一万二千円は現在の体感紙幣価値に換算すると十二万である（！？。さりとて初戦の負けも現在の紙幣価値でいうところの数万負け（笑）なのだ。よくもまあ、気持ち的にも資金的にも懲りずに向かえたものだ。

が、とにかく行って、勝って、始まった。

この一万二千円が大きかったのは間違いない。そしてこの資金を軸にこの後しばらく遊んで行けたというのだからいい時代だった…というより単にツイていたのか。目押しもできないし設定も立ち回りの概念もないただの平打ち。こうして考えると何だかんだでビギナーズラックによってハマった口と言えるのかもしれない。

ただ、我ながら堕落の才能があるなと感じるのは、僕はこの時点から収支表を付け始めたという点に他ならない。一戦目の負けの時点でつけてないのはご愛敬だが、恐らく二戦目の勝利で気をよくしてプラス収支の間に自己満足で始めただけなのだろうが、それにしても店名・打った台・投資・回収の項目をしっかりメモ帳に付けていた。誰に教わるでもなく、だ。

怠惰を求め勤勉に行きつくという言葉があったが、遊び人として生きていくための素質とも言えるこの精神を元々備えていたのかもしれない。

…とは言ったものの、まだ満足に目押しも出来ないためホールへ一人で行く勇気もないこの時期。せいぜい月に一度か二度程度、部活の休みと例のピンズ君の予定とがあった日に行くぐらいで十分に満足出来ていた。

それよりもこの時期は覚えたての麻雀に忙しかった。やはりこれもGW中にピンズ君に教えられ、すっかりハマってしまっていたのだが、こちらの方は手前味噌ながら少しばかり仲間内では抜きんでたセンスがあったのか…すぐに明確な勝ち組側となって、だからこそ余計に面白くて…しばらくは部活帰りに友達を集め、麻雀をしてから家に帰るという日々が続いたぐらい。

中学時代にそこまで仲の良くなかったヤツが麻雀を知ってるという噂を聞きつけ、メンツが足りないからと呼んでみた事があった。そこで軽く役満をアガった事があったのだが（勝ちすぎてたのでナメプしてたらアガれた）その際、僕のセリフは

　「2000円でいいよ＾＾」

本来は3000円ぐらいの負けのところを無理矢理呼んで悪かったから…とオマケしたつもりだったのだが、先述したとおり、この年頃の2000円と言えば今の2万にも匹敵する。

突然呼び出されてこれでは、相手側からすれば仕組まれたとしか思えないだろうが、そんな事にさえ頭が回らず悪気なく取り立てるKYっぷりは当時から存分に発揮されていたのだ。

恐らく、この頃の僕の評判はかなり悪かっただろう（別に今が良いわけでもないがｗ）。後にこの傍若無人っぷりが原因で（？）、現在に至るまで続く因縁を生むある事件が発生するのだが、それはまだ先の話。
　　

天狗の春は短い。やがて季節は夏となり、皆高校生活にも慣れてきて徐々に麻雀で集まることも少なくなっていった…　そして僕は魚と出会う。