サーっと血の気が引いた。身の毛もよだつおぞましさ、これはヤバイなと感覚でわかる。蟹の身をちゅるんと綺麗に引き抜く様に、カシラつきの生海老の刺身をスポッと剥く様に、背骨の腰の付け根の部分が抜け落ち神経だけが糸を引いていくようなイメージが瞬間、過ぎった。
「ちょ、ちょ、ちょっと…」
「?」
一緒に仕事をしていた相方は目の前のオッサンの異変にまだ気付いていない。現在進行形で二人で重い鉄蓋を開けているところだ。
この日は設備点検の仕事でハンドホール(マンホールより小さな地中施設)を開けていたのだが、蓋が特大サイズのもので持ってきた専用開閉器が使えず、止むを得ず原始的な開け方…つまり人力で持ち上げる方法にしたのだが…
手マンと呼ばれる(w)、手動のマンホールキーを用いてせーので二人重い蓋を持ち上げた瞬間、ピキーンと…
ケンシロウに秘孔でも点かれたエフェクトが発生したかの如く僕の腰はお逝きになってしまわれた。
予兆はあった。最近、やたらと腰が重いなと、風呂上がりのストレッチの際にやけに股関節周りが固くなったなとは感じてはいた。ちょうどコロナの影響でマッサージにも行けなくなって半年ぐらいが経つが、いつもは本当に辛くなった頃に通うようにしていたのでその影響もあるのだろうか。
或いは以前にも増して重くなったデブにゃんの影響もあるのか。本人がそもそも単に運動不足で太っただけかもしれないが。
理由は様々だろうが、積み重なった全てが今堰を切って僕の腰ダムは決壊寸前。
「どうしました?」
「こ、これはマジでアカンやつやで(;^ω^)…」
ようやく異変に気付いた相方のオッサン。何とか鉄蓋を安全な場所へと降ろし、恐々と深呼吸をする。腰の辺りがうすら寒い。脂汗を滲ませながら現状を把握することにする。
(ねじり…キツイな)
(前かがみは…無理ッ‼)
(反り…キツイが何とかできる)
(歩行…可能!)
過去に何度かギックリ腰の人を見たことがあるが、大体まともに歩ける状態ではなかった。それを思うと僕のはまだギックリ腰の一歩手前と行ったところで踏みとどまれているようだが、先の保証はない。
時刻は12時前… 雨で仕事が遅れてるぐらいで、まだまだ点検個所は残っている。
(今帰ると相方とガードマン分の人件費で大損なんだよなぁw^^;)
即座にこんなことを思う辺りが変わったなと思うが、最近はまず社の利益を考えてしまう。果たしてこれは良い変化か悪い変化か。
それに金だけの問題でもない。この日は久方ぶりに天候が回復していた。悪天候だと厳しい仕事のため、なんとか晴れてる内に進めたいという思いと、反面ここで無理してこの先寝込むともっと仕事が遅れそうだという思いが判断を迷わせる。
(そもそも続行できる状況なのか?)
感覚的にはあと一撃さえ貰わなければこの日は乗り切れそうな気がするのだが… かわしきれるだろうか?この俺に。
とりあえず設備点検が終わったハンドホールの鉄蓋を元に戻さなければならず、腰を最大限カバーして膝の力だけで重い鉄蓋を持ち上げてみる…
(これは…ギリのギリで何とかなるか(;^ω^)??)
まあ最悪目の前に人がいるし何とかなるだろうという見切り発車で、おじいちゃんのような動きで戦々恐々としながら何とかこの日を乗り越える…
後で知ったが、ギックリ腰になったら当日はともかく動ける状況なら寝ているより何とか身体を動かしていた方が回復が早まるそうだ。実際、動いていた方が体は楽であった。
その証拠に(?)、家に帰って寝ころんだら二度と起き上がれなくなったとさw
…と言うのは大げさだが、実際起き上がるのにものすごい痛みを伴い寝返りを打つと悶絶してしまうくらい。お風呂で温めてみたら少し楽になったものの、やっぱり痛みは引かず…くしゃみをするたびに背筋に冷たいものが走る。
翌日起きると10段階中2ぐらいだった腰コンディションが10分の3くらいになっていたので再度死線をくぐりに行く。やはりくしゃみに怯えながらも相方改め介護士のおかげで何とかおじいちゃんは生還。
(なんだかやけに傾いているような…これが原因か?)
帰りに整形外科に寄ってみる。レントゲンを見る感じ、骨盤のゆがみが…先生がそれを見ながらゆるい表情で聞いてくる。
「足に痺れとかはある?」
「いいえ、それは無いです」
「うーん…じゃあここ押したら?」
「そこは特に」
「うん!」
「骨は相変わらずきれいなもんだねw」
「え!?」
数年前のカルテと見比べても全く変化のないレントゲン写真。つまりこれはレントゲンに映らない筋肉や筋、腱などの捻挫のようなものらしく… 足の痺れがない以上神経の圧迫などもない。するともう、例えるなら筋違いや寝違えのようなものだそうで。
(寝違えレベルであの痛みかよ(;^ω^))
改めて腰という場所の重要性に恐れおののくが、ギックリ腰の大半はこの腰椎捻挫・腰部挫傷が原因らしく、ある意味で僕のこれはギックリ腰で間違ってないそうだ。
祝!人生初ギックリ\(^o^)/
腰が悪いとボヤく以上、これは経験しておかねばと思っていたが… やっぱりイザなってみると何もいい事などないなw
くしゃみがとにかく怖いんだ><
コメント
わかるよー靴下を履くのにさえうめき声上げながらひーこらする自分と悪気はないのかもしれないが刺さる冷たい視線…いつもストレッチしててもなるのか…喉元すぎるとストレッチもやってないというw
お大事に!
僕の初ギックリは携帯の充電器を床から拾おうとした時ですwビキン!となり床に手を伸ばした状態から一歩も動けず
これはアカンとその態勢のまま会社に電話しましたw2週間くらい尾を引きましたのでご自愛くださいませ
痛めたての頃は暖めるんじゃなくて冷やすんですよ
暖めると痛みが血流と共に流れてその時は楽になるように感じますが、予後はよくありません
なんでも欧米式が正しいとは言いませんが、欧米の運動学では痛めたらまず氷水で強烈に冷やしますし、ハードなトレーニングをするアスリートも練習後は必ずアイシングをします
自分も股関節からくるヘルニアに長年悩まされて色々試しましたが、結局一番効果があったのはスクワットでした、まず自分の身体の重さが軽く感じますし、何かを持ち上げる際も同様です
スクワットは人生を変える!自重なら毎日やったって大丈夫です、ストレッチと平行して行うのをお勧めします、下世話ですが夜の営みにも強くなりますぜ
仕事もまだまだやっていかなければなりませんし、お子さんも一緒に走り回るのはこれからです
足腰鍛えてケアしましょう
お久しぶりです。ついにやっちゃいましたか前も書いたかもですが
自分はトイレでケツ拭いてる中腰の時にイワしてますw
その時はそれほどでしたがそのあと治りかけに足組んだ状態で
くしゃみしたらおもくそ捻じって大打撃を受けました。
しかしその状態で作業は怖すぎですね。まさに綱渡り状態
すっかり仕事人間やでぇ
>>REGさん
え?なんで冷たい視線刺さるんすかw 妻からならともかく、同僚からだとしたら中々ひどい話じゃないっすかそれw?
ストレッチは毎日やってますけど、やっぱ運動と合わせてやらないと効果薄いのかもしれませんね><
>>ヨシホイさん
どんなキッカケでなるかわからんとは言いますが、軽い物を拾うだけでなるたあ… 我々の歳になるともはや些細なことでも膝で上下しないとアカンって事ですな(;^ω^)
現在一週間過ぎましたが割と快方!痛みに耐え仕事をしたのが却ってよかったのかしら^^
>>久しぶりにコメントさん
なんか暖めるのと冷やすのは昔から論争がありますねw 熱を持ってたり腫れてたりしたらそうした方がいいという印象はあったんですが、家に帰った頃にはもうとにかく暖めたいって思いしかありませんでしたw
スクワットが腰痛にいいかはともかく、自重系のトレーニングはした方がいいんでしょうね。腰が治ったらストレッチに加え筋トレもしていこうと思いますよ。せっかく家が広くなったんだからスクワットもやりたい放題だぜ!!!夜の営みもがんばらな…w
>>三重県人さん
おひさしプリッツ!
治りかけにそれは…僕も気付くと足組んじゃうしやっちゃいそうだなwありがとうございます、気を付けますよ。
点検作業はあれから一週間休みなしで続けてますけどコルセットして膝を意識して何とか生きてます。親族経営の親族側ということでそれなりに責任感持ってきちゃったのがアカンな(´;ω;`)ウッ…
うみさん、その妻よw
それは…やっぱり、怒っていいと思う(;^ω^)w
頑張る夫になんて視線を向けるんや、と。