2/19　　死後の意思

義父の弟さんが亡くなったらしい、享年68くらい。かなり前から危ない危ない言われていて…、しかも入院を拒んで倒れても救急車を追い返すという手が付けられない状態だったので当然と言えば当然の結末。

　「多分早く死にたかったんじゃねえかな」

兄である社長が以前そう言っていたが、確か弟さんは近くの市営住宅に一人暮らしで引きこもっていたはず。週に何度かケアマネージャー（介護支援の方）のような人が来てくれているだけで、他は外界とは一切の関係を閉ざしていたらしい。家族はおらず、親兄弟とも社長以外とは付き合いがなかったそうで、確かに聞いていると座して死を待つだけの余生のように感じてしまうが…

でね、葬儀の前に部屋を整理してたら･･･通帳が見つかりまして。いくら入ってたと思う？

え？あの人って生活保護受給してたんじゃないの

違うよ。ちゃんと自分の貯金と年金で生活してたんだよ

そうだったのか。てっきり生活保護だとばかり思っていたが、そうだよなぁ。だったら兄である社長が援助してたろうし･･･

そうして死後残されていた預金額は…思っていた数倍はあった。早く死にたがっていたという割にはこんなに残してどうするんだろうという額である。

　（勿体ねえな…という感覚もなかったのかな？）

高級老人ホームにでも移れば良かったのにと思うも、きっとそういうのが煩わしかった人なんだろう。贅沢もせず遊びに金を使うわけでもなく、老後のため（？）にと蓄えていたお金を残して死ぬ間際に後悔などはあったのだろうか？今となっては誰もわからない。

前述のとおり彼に家族はいなかったので唯一接点のあった義父に…と思いきや、この場合まだ健在である両親＝つまり義父の母（98歳）に相続権があるそうだ。

ちなみにおばあちゃん（義父の母）は弟さんが亡くなった事は知らない。というか言う気はない。

元々既に数十年以上関りがなかったらしく、危篤の際もどうしようか迷ったそうだが親族間会議の結果知らせずを貫くことに決めたそうだ。それと言うのも、おばあさんも現在健康状態が危ぶまれている状況で、ここで余計な心労を与えたら一緒に逝きかねないという判断らしい。

余計な心労･･･？実の息子の訃報だぞ！？

まあそんな事は百も承知の上で、向こうの血族内で決めた事なので僕が口を出すのは野暮だろう。距離にして2ｋｍ圏内に住んでたのにもかかわらず数十年お互い関わろうとしなかったというんじゃ、ある意味で他人以下の存在である。そこに至るに一体何があったのかは知らないが、数十年ぶりの家族の縁が遺産相続という形で突きつけられるというのも皮肉な話だ。

しかしまあ…お婆さんも今さら相続したとこで遺産を右から左に受け流すだけだろうにな　

そして何よりそう遠くない将来、その受け流した遺産が結局子供達＝つまり絶縁状態だった他の兄弟達の手に渡るのであればそれこそ本当に皮肉な話だ。

と言うわけで、母と相談した結果生前贈与という形で分散させる事にしました。子供らの教育資金という事なら1500万まで非課税みたいだし

結局俺らが享受すんのかーい

死人に口なしとはよく言ったもので、果たしてこの行為に弟さんは何を想うか。遺言状くらい書けば良かったのになぁ…　書かなかったイコールどうでもいいと思ってたという事ではないと思うんだよ。

これから「仕事」として弟さんの部屋の片づけを請け負ったけど、何かしら出てこないかなと期待している。布団をめくったら10万出てきたがそういうのじゃなくてねｗ