自称ローストビーフ研究家の私であるが、気になるレシピを見かけたので試してみることに。
その気になる調理法というのが、煮汁で肉を煮込むというもの。一見するとチャーシューの製法のようでもあるが、そこはローストビーフなので火を通しすぎないところがポイントなのであろう。低温調理と煮漬けのハイブリット戦法である。

低温調理ねぇ・・・
少し前からローストビーフの新たな可能性を求め低温調理に活路を見出そうと色々試してみてはいるのだが…正直結果は振るわない。というより僕が下手なだけなのもあるが、どうしても粗熱で放置しておくのに比べ肉がパサパサになってしまうわけで…

パサパサになるということは火が入りすぎているという事なのだろうが・・・?
低温調理の際は基本60度くらいのお湯に漬けておく「だけ」なのに失敗している。
今回こんな風に煮込んでしまったらもっと火が入るのは文字通り(?)火を見るより明らかであるが…、逆に煮汁でジューシーになったりして?なんて楽観的に考えていたが甘かった。
別にまずいわけではないよ。
ちょっと想像よりパサついているなというぐらいで普通に牛肉としての旨みはある・・・が、それなら焼いたって揚げたって美味い。和牛だもの。
ローストビーフとして、これは残念ながら僕の求めていたものではなかったというだけなのだが。
僕はもっとこう・・・瑞々しくジューシーな牛肉を噛みちぎりたいのだ。噛み切れなくて何度も奥歯でぎゅむぎゅむと押し潰すあの触感…ライオンがカモシカの首筋を食い千切るように、滴る血が浮かぶぐらいの新鮮さをジューシーさを口内で噛み締めたいのだ。犬歯を・・・犬歯を酷使したい!!

なら火を通さなきゃいいじゃん

…ッ!?

いや、だからローストビーフじゃなくてタタキにしたら?
そ、そういう事かっ!!!
思えば当時のブログを見ても見事なまでに肉は半生状態である。恐らく一般的なローストビーフに比べ内部に熱を入れないものを僕は初手から本筋だと思い込み、以降ずっとその味を追い求めていたきらいがある。
そしてその道中で「湯煎」という調理法を知ってからというもの、僕は迷走しだした。自分の食べたい味を・・・目指すべき方向と真逆の事をさも当然と言わんばかりに実行し、挙げ句まずいだのパサパサだの・・・そりゃそうだろうよ。生肉の食感が好きなのにわざわざ火を入れてパサパサにしているんだから何をしているんだかわからない。

俺はなんて無駄な時間を・・って?ん?
というわけで、次はあえて生を意識して和牛のタタキのレシピで作ってみたものの・・・あれ?確かに僕の求める食感と旨みはあったのだが、、何かが違う。これか?本当に僕はこれを求めていたのだろうか。
少なくともそこに以前のような感動はない。もちろんうまいんだけどね。だけど僕がローストビーフ研究科を志すに至った味かと言えば、これは違う。

これは…生だ

そりゃそうだろうよ
うまいんだが、ジューシーさの種類が違う。手抜きの味というか、何か一手間欠けたような、非常に惜しいが82点ぐらいの出来…!!

まあでも最近のは65点ぐらいだったから悪くはないんだけどさ
『牛肉のタタキ』=下味をつけた牛肉赤身のブロックの表面を、炭火やバーナーなどで直接炙り、中の肉の赤い色を残して外側だけに焼き色をつけ、スライスしたもの。
『ローストビーフ』=下味をつけた牛肉赤身のブロックをオーブンで焼き、中心部に赤身の色を残したまま焼き上げてから冷ましてスライスしたもの。 調理方法が全く違いますし、タタキは中心部が完全な生であり、ローストビーフは中心部まで赤みを残したまま加熱されています。

赤けりゃいいってもんじゃねえのか
その後文献と言う名のクックパッドを読み漁っていると、どうやら見た目が生っぽくても中に火が通っているかどうかでローストビーフと和牛のタタキは違うのだそうで… そうなんだよ。刺し身など生が嫌いな妻が和牛のタタキを出すのは何かおかしいとは引っかかっていたんだが、やはりあれはローストビースだったんだなと。
つまりあれは絶妙な火加減で生以上パサパサ以下の「ジューシーさを残したまま熱を入れる」という状態を実現した99点のローストビーフだったのだ!!
この「半生よりちょっと先」という状態こそ僕の求めるべき場所である。

ってあれ…?これってまんま低温調理の理念なのでは!??

めんどくせえなこいつ
やはり低温調理=湯煎という方向は間違ってはいなかったのかもしれない。考えてみれば一度はすごく上手に作れていたので、以降の不満足な出来が純粋に僕の腕不足というだけなのだろう。
少しばかり回り道をしてしまったようだが、おかげで正しい道を知ることができた気がする。

飽きたか舌が肥えたかってだけの気もするけどね

或いは過去を美化しすぎているか、もな
湯煎を制した先にきっと答えがある。
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