7/1　　運の使いどころ

ガガガガガ…と、血の気の引くような鈍い音が周囲に鳴り響く。

近くで新築の家の上棟が行われていたので何かあったのかなと思ったけれど、次の瞬間聞こえてくる新人君の僕を呼ぶ声…　

う、うみさ～ん…

おおうっ…

すみませんっ…またやっちゃいました

と言うわけで、今度は電柱に高所作業車をぶつけた新人君。最近は簡単な業務なら一人で出来るようになってきたため、それを任せて僕は近くで別の作業をしていた際に起きた事故。

ただまあ、走行中にぶつけたわけじゃなく、作業中にブームを旋回している最中にこすった程度に見えるので、そこまで大したことは無さそうだが。

ま、いずれやるとは思ってた

このぶつけ方は仕様上の問題というか‥僕の高所作業車が若干特殊なため、慣れてない人は必ず通る道。実際過去に何人も同様の事例が起きていて…ちょうど死角というか盲点になる場所なのでぶつけるのも仕方がないかなという気持ちもある。

僕も何度もやってるし＾＾；

・・・ん～？まあ相手が柱だし大した事ないら？とりあえず降りてみ

いや、動かないんですよ…

え？そんなテンションかかってるようには見えんが

まったく動かないんです！

ん？？…まさか操作が利かないって意味？？？

始め、バケットが柱に挟まって動けないと言う意味だと思った。それはそれで大変なのだが、まあその場合はアウトリガー（転倒防止装置）を無理やりズラすなりで対応出来るかなと思っていたわけで…しかし違うと。新人君の言ってる「動かない」は文字通り箱（バケット）そのものの操作が出来ないと言う意味で…

あ、ほんまや‥　緊急用の操作も一切効かん

上での操作が不可能な場合のため、高所作業車には地上部にも操作盤が設けられていて、緊急時に下部からの操作が可能となっているのだが今回それが見事に効かなくなっていた。

意外に大事かもしれんｗｗｗｗ

うぅっ…

なんてったってこのままじゃまず新人君が地面に降りられない。通行の邪魔になるような位置ではなかったのは幸いだったが、かと言ってこの炎天下の中何時間も地上5ｍぐらいの場所で放置しておくわけにもいくまいし、そもそも見栄えが非常によろしくない。

あ～、なんかヒューズ飛んでるね

何回見ても車のこのヒューズボックスのしょぼさが慣れんな…

もはや僕の手には負えないという事で、急いで整備工場の人に来てもらうとヒューズボックスという、車の分電盤のような部分の「主回路」と書かれた場所のヒューズが飛んでいる事がわかった（画像は拾い物なのでイメージ）。

試しに予備のヒューズと変えてみると、即座に飛んでしまった。

つまり、ぶつけた箇所で主回路とやらのケーブルが短絡（ショート）してるって事ですかね

状況的にそうだと思うけどなぁ

ぶつけた箇所を入念にチェックする。

おーおー、思ったより逝っちゃってるな

なるほど…下から見たら擦っただけに思えたが、こりゃ擦ったというよりぶつけてさらに無理やり動かした感じか。すぐに止めてればここまで大事にならなかったろうに…

間近で見ると結構べっこり逝ってんな～(;・∀・)

で、ぶつけた箇所をさらに細かく探していくと、先ほどべっこり逝ってたカバーの変形により圧迫されているであろうケーブルを発見！状況的に見てほぼここで短絡が発生しているはずなので、とりあえず色々バラしてケーブルをフリーにしてみる。断線さえしてなきゃとりあえず何とかなる・・・はず。

ガガガｇ・・・・！！

お

お

ああっ…！

そして目論見通り、その作業で何とかバケは動いてくれて一件落着…？と思いきや、なぜか別の箇所がイカれてしまって後遺症を残す事となってしまった。

具体的には車体の平行感覚を感知するセンサー？が馬鹿になってしまい、誤作動を起こすので操作の際に毎回緊急用の強制稼働レバーを入れなければならないと言う大層面倒な後遺症で…

例えるならば、キーボードを打つ際に毎回コントロールキーを同時に押さなければならなくなったぐらいの面倒くささ…

直すのもかなり面倒だし金がかかりそうなので、動くうちは騙しだましこれでやっていくしかなさそうだが…？

す、すみませんでした…

お、おお。次から気を付けてくれよな（マジで

しかしアレだな‥‥今まで何度も何人も同じようなぶつけ方をしたことがあったが、こんな風になった事は一度も無かった。それをたった一度、一度の事故でここまで結果を残すとは…新人君っ・・・恐ろしい子！！

ヤツは何か「持ってる」のかもしれんな…

というより、アンタのギャンブル運の無さってこういう部分で相殺されてるんでしょ？

なるほど…　そうかもしれんが

じゃあさ…逆説的に言うと、新人君にパチンコ打たせたら…！？？？？という疑問に行き当たるわけだよ。

……。

……

やめとこ。いい未来が想像できないやｗ