5/30  十数年来

新しい街で困る物の一つに、「美容院」という項目がある。

特に選ばれた容姿を持つ人以外はどこで切っても大差なんて無いんだろうけど、あのお洒落な外観はどこか気後れし、また、そんなのが何店も並んでいるのだ。ファッション系全般にコンプレックスを抱く僕としては毎度の事ながら気が重い。

しかしどうして美容院ってのはどこも固まって営業してるのだろう?前の場所も凄かったけど、今僕の住む町も三つ四つの美容院が一本の通りで鎬を削っている。赤線ってわけじゃあないんだろうけど、認可が下りやすい場所とやらでもあるのだろうか?

 (はい、ここは店員がシャレオツすぎるから駄目!)
 (はい、ここは外観がシャレオツすぎるから無理!)
 (はい、ここは店名が・・・)

そんなわけで、切ろうと思ってから何日かその通りを散歩がてら、各店の様子を見て歩くのだが消去法で残った一店舗、どこかほのぼのとしたアットホームなお店に入ってみる事に決めた。

 「いらっしゃいませ。うち、床屋ですけどよろしいですか」
 「・・・え?・・・あ、・・・・はい」

店主の第一声。我ながらいい叩きっぷりである、石橋の。倒置法。

 (今さら嫌ですとも言えないし・・・)

そもそも床屋だから嫌ってわけでもないんだよな。ただ、店主の質問が全てを物語っているように、床屋と聞いて引き返す人もいるのではなかろうか。事実僕も一瞬「うっ」となったが、冷静に考えてみると何に「うっ」となったんだろう?

 (床屋と美容院の違いって何だっけ?)

確か顔剃りをやるかやらないかだったような曖昧な記憶があるが、だからと言ってそれで髪を切る技術に不安があるわけでもない。ただ、何となくイメージとして美容院の方が若者向けの流行に敏感というか、外観を大切にしている節があるように思え、逆に床屋は基礎工事に命を賭けているような印象がある。

パーマの美容院。
角刈りの床屋。

こんな感じか?あくまで僕の主観だけれど。

 (しかしまあ・・・)

兎にも角にも僕は流行とは無関係な男。ボサボサの髪を適当にやってくれればいいっすよ、というスタンスなのでどこで切っても変わりはなかろう。というか、そんな野郎が格好つけて少々割高な美容院に行く方がどうかしているのかもしれない。

よし、中学生以来の床屋、行ってみようじゃないか!

 「それでは、初めにこちらの記入をお願いしますね」

まずは名前と住所、電話番号に来店動機、趣味、職業と根掘り葉掘りご新規カードに書かされる。これを見てカット中の会話の参考にするんだろうなーと思ったら、なんて事無い、カット中は全くの無言であった。あの趣味の欄に一体何の意味があったんだろう?登山と書いたのがいけなかったのか??

 「バッサリいった方がいいと思うんですけど、どうですか?」
 「そうですかね?」
 「ええ、でもうみさんがどうしてもって言うなら残しますが・・・」
 「(´・ω・`)切ってください」

時折入る会話はこういったものばかりで、と、ここらで入った瞬間から感じた違和感の正体が判明する。「うっ」の正体だ。

 「セットはですね・・・」
 「ええ、でも僕セットしませんし」
 「やった方がいいですよ」
 「面倒くさいんすよ・・」
 「いや、でも・・・」

例えば髪の毛のセットの話。僕はここ十年ぐらい、ワックスもスプレーも触ったことがないのだけれど、今日は根負けしてセットされた。案外印象が変わる物だと発見もあったのだけれど、それを伝えるとセット講座が始まり、さらにはハードスプレーまで購入する事になってしまった。(無論、最後は僕の意思だが)

ついでに、眉毛も何とかしましょうと言われ、曖昧に返事をして気付いたら半分ぐらいになっていた。びっくりした。ヤンキーかと思った。でも今までが伸びすぎだったんですよ、これでスッキリしましたね!と、言って満足気な店主。僕がNOと言っても剃ったんじゃないかと、そんな気がしてならない。

 (いい人なんだろうけどなぁ~) 

たまに、超健康志向で無農薬野菜なんかを売りにした飲食店に入った時のようなあの雰囲気。脱サラをした夫婦がやってるような、いかにもなヒッピースタイルの店主が鎮座しているような、あの独特の空気。

親切の押し売りというか、それとも無知への蔑みなのか。「こうした方がいいですよ」じゃなく、「どうしてこんな事もわからないのあなた」と言った上から目線。

一言で言うならば俺の店。俺の城。

僕の感じた感覚はソレなんだと思う。圧倒的アウェー感。これ、受け入れられる人は常連になるが、駄目な人は全く駄目だと思う。

僕は基本的にこういうのは苦手なんだけれど、なぜかこの日は違った。

 「ほら、見てください。泡、茶色いでしょ?これ、全部産毛ですよ」
 「はぁ…すいません」

こんな具合に一々動作をストップさせて説明してくるのだけれど、なんかコンプレックスがそうさせるのか素直に聞ける。いつもならうるせー死ねって思うんだけどなぁ。

十数年ぶりの顔剃りの気持ち良さに負けたよ。床屋、いいジャン!

コメント

  1. ひろたかし より:

    わかます!
    自分もお洒落な美容院は無理~_~;
    もっぱら町の外れにある美容院か
    友達が経営してる美容院にいきますよ!
    ただ、友達の店のスタッフが…

  2. 椰子 より:

    床屋=男性向け
    美容院=女性やオサレな若者向け
    っていうイメージがあります。
    床屋には大体少年ジャンプ系の漫画が本棚には置いてあるけど、美容院だとファッション雑誌や日経トレンディとかが置いてあるような・・・。
    10年以上通ってるいきつけの美容院ではカットが終わってひと段落するとお茶菓子と飲み物が出てくるんですけど、これってどこの美容院でも出るもんなんだろうか?
    床屋は小学生以来ご無沙汰してますが、よくアウターゾーンやこち亀読んでたなあ。

  3. kenji より:

    マジレスすっとほとんどの床屋は、理髪協会という協会に入り
    理容師免許というものを持ち、それにより客の肌にあのような刃物を当てることができるのだ。
    これは整骨院と接骨院にも同様のことが言えるから注意が必要だ。
    ちなみに、床屋は協会で決まった料金を取らないといけないので
    どうしても割高になってしまう場合が多い。
    もう1000円カットでよくないか?

  4. ( ・ω・)y-~~~~ より:

    お勧めの読んだ。おもろかったw が、能力変態バトル物でどんでんが欲しいな。
    次のお勧めと予言クレ(´・ω・`)

  5. umi より:

    >>ひろたかしさん
    美容院の友人がいるのもシャレオツじゃー!!!
    ってのは冗談ですがw街の外れでひっそりとやってるお店の落ち着き具合わかります^^ただ、そこにしてもやっぱり一見は怖いですよね… いつか我々は自作カット派になってしまうのでしょうか。。
    >>椰子さん
    いやーwお茶菓子と飲み物は出ないんじゃないですかね??パーマかけたりしてる人には出してるの見た事ありますけど、ただのカットだけなら常連効果恐るべし!!
    アウターゾーン僕の行ってた床屋にもありましたw懐かしいww
    >>kenjiさん
    え?床屋の方が割高なの!??知らなかったぜ… でも現実には美容院の方が高いし、何をどう上乗せしてきてんだろうね。
    >> ( ・ω・)y-~~~~ さん
    能力バトルものはハンタ以上のものは望めないでしょうし…つーか、ダンゲロスってハンタのパクリ凄いありますよねw 他は…能力物?とは違うけど、焔の目ってハイスコアガール書いてる人の作品がなんか、こう、色々期待を裏切るというかうーん、まあ暇ならどうぞw 完全に豪鬼じゃねえかアレw
    相場は先々週末から流れが変わったので週明けは見。ガンホーは塩漬けする余力があるなら分割後にどうせ下げるので買うといいってタケシが言ってました

  6. セガタ より:

    美容院は今まで一回だけですよ。
    ムサオなものでサーセン

  7. umi より:

    >>セガタさん
    お、おう…

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