6/25  マナーの境界

ディスプレイに表示された名前を見て驚く。我が携帯にその名が表示されたのは実に十数年ぶり… まだ、地下強制労働施設に行く前の頃の話だ。専門学校時代の友人。

 (一体何が?)

思う間もなく、電話を取った。

普通、こういうパターンというのは金の無心かMLM、または宗教の勧誘と相場が決まっているものだけど、いずれにせよやはり第一声が肝心である。

 「おw繋がった」

間の抜けた声にほっとする。

と、言っておいてなんだけど、さほど上記のような心配はしていなかった。電話の主とは確かに十年ぶりぐらいに連絡を取ったものの、実のところなぜそこまで連絡を取らなくなったかがわからないぐらいの相手である。

人には誰しも第一印象というものがあるが、そこで極稀に「あ、こいつ同類だ」と感じるような事があると思う(…よね?)。松田聖子風に言えば「ビビビ」と来たってやつ。この第一感は何も恋にだけ当てはまるものではなくて…

彼は僕にとって正しくソレであった。ネクラがネクラを初対面で見抜くように、スタンド使いがスタンド使いと惹かれあうように。初めて会った瞬間に感じるソレ。絶対的な親近感とも言えるし、もっとくだいて言えば「あー、こいつとは気が合うな」と感じる感覚のもっともっと強いやつだと思ってもらえればよい。

後に僕が何も言っていないのにも関わらず、突然彼が同じような事を言ってきたときは大層驚いた。波長というのは本当にあるのだろうか。人間というのはまだまだ謎だらけだ。

ちなみに僕がこういう風に感じた人は記憶の中では過去二人しかいないのだけど、一人は女性でやはりこの十数年、長い間色々あって、一人は男性で今こうして十年ぶりに電話を貰った。変な言い方になるが絶対切れない「縁」のようなものは感じる。或いは前世で何か強い因縁があった間柄なのかもしれない。

僕は二人を魚君とは違った意味で信頼し、特別視もしている。そんな相手からの電話である、さほど突然の連絡にも不安はなかったというわけだ。

 「どうしたよ。随分久しぶりだな」
 「おー、どうせそのうち会うだろって放っておいたらこんな時間経っちまってよーwふとまだ繋がるかなって電話してみた」
 「良かったな、繋がって」
 「どうだろうねw?」

時間の隔たりをまるで感じさせない当時のままのような空気。くどいようだが、やはり不思議なものを感じる。実のところ僕は彼とは四ヶ月ほどしかつるんでいない。僕が速攻で専門学校を辞め地下労働施設へ行ってしまったせいなのだが、その四ヶ月にしても毎日つるんでいたわけでもなく、一緒にいた時間は実際もっと短い。

だけどその時間を関係なく、無二の親友のように感じていたのも事実だ。今こうして話していてそれを思い出した。友情は付き合った時間に比例するものではない、と。

 「実はさ、式挙げることになってよぉ」

やがて彼は電話をしてきた本来の理由を語り始める。

 「マジか!?行くいく!」
  「おう。それはどっちでもいいんだけど、結婚する前に嫁さん紹介したくてな」

…と、そんなわけで、近々ちょっくら静岡方面に帰ることになったのだけど、その際彼は家に泊まっていけという。嫁と、「子供」がいる家へ。嫁さんの連れ子らしいが、小学生低学年ぐらいか?幸せの絶頂を迎える家へ、この疫病神に泊まれと言う。

これって額面どおりに受け取っていいのだろうか?

 (でもまあ、こっちから出向くと三時間ぐらいの距離だし、終電だと二十二時とかになってしまう。十年ぶりに飲んでそれは少し寂しい、けれど深夜にハイ解散!ってのは向こうも言いにくいだろうしなぁ。)

そう思うと、泊まれと言うのは相手の立場からすれば真っ当な事のようにも思えるが…

まずは一応断った。気まずいし、そして気まずいし。KYとか関係無しに、僕がまず泊まるのに躊躇する。嫁の立場で考えても、初対面のオッサンが泊まりに来ればそれが例え旦那の旧知の友でもう~んとなるだろう。

 「いや、そんなの全然大丈夫だって、泊まれよ」
 「う~ん…いいよ、適当に漫喫で仮眠とるから」

それでも彼は泊まれという。僕が彼の立場でもやはり泊まれというだろうし、嫁の事も気にするなと言うんだろうけど…

とりあえずその時に考えるか!と電話を終えた。

 「いいか、うみ。断るのは二回までというマナーがあってな」

後日この事を先輩に話してみると、このような答えが返ってきた。なんでも、三度目の誘いを断る事は失礼にあたるそうで。

 「逆に言えば二度まで断るのもマナーといえなくもない」
 「…って事はですよ、既に僕は二度断っているとして、向こうで再度誘われたら断ってはいけないという事になるのでしょうか!?」
 「空気を読むしかないな」

 (それが出来たら苦労しない!!)

果たしてどうするのが正解なのか。得意の手土産引っさげて行ってきたいと思います。

コメント

  1. ヨシホイ より:

    兄さん帰郷キタ━━━(゚∀゚)━━━
    家に泊ってもいいのよ?w

  2. 椰子 より:

    うーん、友人の奥さんと顔見知りだとしてもさすがに泊まるのは躊躇する局面ですね。
    これがエロゲだったらNTR期待するんだけど、ダークなエロゲのやりすぎなんだろうな自分( ゚∀゚) アハハハハノヽノヽノ \ / \

  3. のっぽさん より:

    5年位前からブログを読ませてもらっていますが、何故かこのタイミングで初コメントさせていただきます。
    先輩とのやりとりがアフロ田中みたいで笑えました。

  4. やす@豊中 より:

    じゃあ空気の読めないうみくんでも何とかなる想定問答をw
    「自分が何人目の御宅訪問者か奥さんに聞いてみる」
    初めて→特別視されてるっちゅうことで泊まってもOKの可能性大
    多数いた→そのうちの何人かは泊まっただろうからこれまた友人訪問&宿泊OKな奥さんと推測
    数人→これが唯一顔色を伺うパターン…あとはガンガレ
    まあ旦那の旧友(しかも遠方)ならかめへんよ的思考の新妻は多いと思いますよ…

  5. kenji より:

    さけのんでKYして、寝て、帰ればいいんだよ

  6. 一男太郎 より:

    この人・・・・・・
    めんどくせぇっ・・・・!

  7. より:

    儒教の教えだったかなそれ、満喫泊まるならビジホ泊まればいいじゃん。
    断りを入れるにしたって満喫で、なんて本当に会話で言ってたら向こうもほっぽり出せないでしょう
    てか難しい状況だね、俺なら外に泊まりたいかな

  8. umi より:

    >>ヨシホイさん
    自分の部屋>野宿>>人の家
    三島駅降りたの何気に初めてだったけど驚く程何もないね…あそこ^^;漫画喫茶すら無いとは想定外だったw
    >>椰子さん
    NTR属性ありっすか>< エロゲと聞いたらなんか久々につよきすやりたくなってきたなぁ。
    >>のっぽさん
    なぜこのタイミングでw
    ガビーン!!!とか効果音つけた方がよかったっすかねw
    >>やす@豊中さん
    有り難いQ&Aをありがとうございます!ですが、ですが!
    …なんと家まで行かず、嫁さんが駅まで迎えに来てくれてそのまま居酒屋直行便NYでございました!そしてそのまま解散。
    杞憂っ!僕の心配はいつだって杞憂っ!
    つーか、住んでるのが嫁さんのご両親の住む一軒家(嫁の弟もいる)っておまっwって感じでしょ(;^ω^)ちなみにそこに泊まった友人はまだゼロでしたw
    >>kenjiさん
    KYできなかった(と思う)が、酒飲んでそこらへんで寝て、帰ったぜい。さすがの読みの深さですね先生!
    >>一男太郎さん
    みんな口に出さないだけでこんなもんじゃないっすかね^^;?違うなら面倒くさいと言われてもしょうがないw
    >>ピオネッティーオさん
    儒教の精神なのか、これ?最寄り駅には漫画喫茶無かったよ。カプセル取ろうと思ったらつい最近カプセル辞めてウィークリー一本にしたとかどないやねん!!結局隣の駅の漫画喫茶で事なきを得たが、まあ確かに馬鹿正直に漫画喫茶と言う必要は無かったな。ここらへんが駄目なんだよな、俺は。
    あと、そこまで心得ているのなら、今度こっちくるときはそれとなく察せよ^^

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