1/19  死は誰のもの?

 「三大しつびょうは恐いもんな!」
 「あんた…それ、三大『しっぺい』だから…」

結婚・保険…それから就職という単語に縁のない男と言われ続けてはや十数年。いよいよ私も保険メンに成り下がりました。宵越しの銭は持たないと豪語していたのに情けない限り。もちろん妻子持ちの心得として世間一般的にはどちらが正しいかなんていうまでもありませんが…

 「保険だけどさぁ、ウチで契約してるヤツでいい?なんか結婚したんなら入れなさいって五月蝿くてさ」
 「あー、なんもわからんから好きにしてよ」

この歳まで生きて初めての保険です。いや、まあ車とかそいうのは入ってたけど、生命保険?的なのは初めてなので右も左もわかりません。あれだけたくさんの保険のCMを見てきたはずなのにどこか他人事のように思ってたんでしょうね。魚君なんかは若い頃からずっと入ってるみたいだし、一体どこでこういうのを学ぶんだろう?会社なのか??

保険は妻の担当になってるおばあちゃんのところに決めた。よく保険は付き合いだ、なんて言うし実際昔、バイトしてた雀荘を辞めた先輩が保険の仕事を始めて周囲の人を勧誘しまくっているという話を聞いてうへぇとなったのだけど、やはりこれも他人事のように思っていたが、実際自分がそうなると「保険は付き合いだ」という言葉がよくわかる。

というか、皆保険に関して無関心でチンプンカンプンだからこうなるのだろう。ちゃんと自分で調べて保険を選べばいずれこのような「なあなあ文化」は廃れると思うのだが、悲しいかな僕もまたそれに貢献してしまっている。よくわからんから知り合いのでいいや、という気持ちが今は痛いほどわかる。

 (死亡したら3000万かぁ…)

僕の家は母方がガン、父方が糖尿病の系譜を辿るエリート家系なので入っておいて損はないと思うが、実際これは僕のためというより僕の周りの人のための保険なのだろう。妻は僕が死んでもお金なんかいらないからもっと安いのでいいよと言っているが、僕としてはせめてお金ぐらい残してやりたいと思うし、またそうじゃなきゃ保険なんて入らない。

 『保険は自分のためならず』

これは大きな発見だ。無頼を貫いていたら生涯気付けなかったかもしれない。

そうそう、話は少し変わるが似た様な事でこの間こんな会話があった。

先日、六歳未満の女子が脳死判定を受け両親が臓器提供を決断したというニュースがあったのだが、それを見て僕は両親の葛藤を想いつつもその尊い決断に一人頷いた。

僕は「臓器提供」についていつも免許証の裏などの意思表示カードの提供する側にチェックを入れている。基本、死んだらどうでもいいから好きにしてくれと思っている派である。

しかしこの件についての自らの見解を語ると、妻はちょっとヒステリックにもこう言うではないか。

 「やだよ!あんたが死んでも絶対に誰にも渡さないから」
 
 (・・・ッ!!)

僕はこの言葉にある種の愛を感じると共に、何か強烈な違和感を感じずにはいられなかった。妻の言い分はもちろんわかる。陳腐な表現だがやはりこれは愛から来る感情なのだろう。相変わらず女のこういう感情論が先立つヒステリックな部分は好きになれないが、この件に関しては責める気にはなれない。

しかし僕の気持ちはどうなんだろう。いや、僕の死後の自分の身体についての取り扱いじゃない、

 『僕の体はどうでもいいが、妻や娘が脳死判定されたとき、同じように臓器を提供できるか』

という問題だ。今まで考えた事はなかったが・・・どうなんだ?僕は何も博愛主義で自分の臓器を提供すると言ってるわけではなく、死んだ後のものはどうなっても構わないし必要としてる人がいるなら使ってもらえればよっぽど良いと単純にそう思っているから臓器提供欄にマルを付けているだけだ。となれば、それが妻や娘の臓器であれ同じ感情を持つのが正しいのだと思う。

ただ、それを想像するといい気はしない。両親や弟のものだって同じだ。だけど心のどこかでは提供すべきだと思っている。妻のような考えの持ち主からしたらこれは愛が無いという事になってしまうのだろうか?

愛する者を失った直後の人に理屈や正当性を訴えるのは酷ではあるが、臓器提供は速度がモノを言う。臓器提供に際し、脳死直後、遺族を振り切り即座に臓器切り離しをするという話を聞いた事がある。それはもう事務的なまでに…

中身が空っぽになった遺体を見て遺族は何を思うのだろう。

残された遺族の心の平穏のために助かる命を見捨てていいものか。

どちらの意見もわかるけれど、別の見方をすると事はもう少し単純になるかもしれない。

 『自分や自分の大切な人が臓器提供を待つ身になったとき、そういう遺族の悲しみをわかってなお臓器の提供を望むかどうか』

これはもう、考えるまでもない。

望む以上は、逆の立場になったときは提供すべきなのではないか?と僕は思うが、そう簡単に割り切れる事でもないから誰もが頭を抱えるのだろう。

今回、臓器を提供する事になった子は自らもまた臓器提供を待っていた身だそうだ。だからこそ、両親は痛いほど両者の気持ちがわかっていたからこそ臓器提供という決断が出来たのだと思う。その上で尚、自分の子の臓器はやれないと言っても仕方のないことだとは思うが、それだけに立派な決断だと思う。

先にも言ったが、愛する者の死にはどんな理屈も正当性も当てはめるべきではないという見方がある。僕自身、書いてて提供するべきだと思っているが、それでもまだ心に引っ掛かりはある。人々の心にある死という概念が変わらない限り今後もこういう議論、葛藤はずっと続いていくだろう。

もう少し時間が経てば、万能細胞などでこういう問題から開放される日も来るだろう。でもそれを待てない人もいる。

現在、僕の意思表示カードは提供する側にサインがされたままだ。いつそういう日が来るとも限らない以上、今後も妻とこういう話はしていきたい。その妻や娘のためにせめて何か残したくて保険に入るが、金は残して臓器は残さないという考え方はズレているのだろうか?

コメント

  1. 裏ダブル より:

    初めてコメントします。
    古くから見ているダラブロヘビービューワーです。
    私も、妻に同じこといわれました。
    死んだら燃やして灰にするより誰かにくれてやればよっぽどいいじゃんと思ってましたが…
    人が亡くなったあと、最も尊重されるべきは故人の意思より遺された人の気持ちなのかもしれません。

  2. ( ・ω・)y-~~~~ より:

    と、言う事は・・・来年の年明けにワンカップと釣り竿持たされて夜釣りに逝かされるって事か。。。。。(;^ω^)
    日本の生保はぼったくりだよ。控除率50%程で宝くじ並じゃなかったっけ?
    客から抜かなきゃCMバンバン撃てないし、社員が年収1000マソ払えないって、笑ってたわw

  3. ヨシホイ より:

    宮迫さんもめちゃめちゃ大事といってましたしね!
    保険は3社程相見積もり取らせてくらべてみましたが、高いけど充実・安いけど掛け捨て等一長一短過ぎてとても悩みました
    結果会社の団体割引が聞く所に入るというw
    臓器について嫁に聞いてみたところ自分のも僕のも嫌といってます。僕は自身の臓器は提供したいと思っていますが嫁のは・・・と思ってしまいます
    なんかもやもやするw

  4. より:

    保険証は国保?社保?
    死亡保険金も大事だけど、エリート家系なら発病後にかかる医療を考えるのも大事かもね~
    死亡2000万に下げてガン保険のほうを充実させるとか。
    ちなみに私は肝臓、糖尿、高血圧で引っかかっているが治療はしていない。

  5. 椰子 より:

    カイジの鉄骨渡りで佐原が太田の亡霊を打ち払った時、
    「死んだ人間よりも生きている人間の方が尊重される」
    といった内容のコメントをしてると思うのですがその通りだと個人的には思います。
    天涯孤独ならまだしも、家庭を持って奥さんと子供がいるなら、少なくとも家族の同意を得られないのであれば例え本人が死後の臓器提供の意思を持ってたとしてもやめた方が良いかと。
    奥さんや子供がもし納得してくれたのであれば、何も問題ないと思います。
    僕自身の考えですが、家庭を築いた時点で自分の持つ全てのものは家族全員の共有物になると思うので。

  6. 匿名 より:

    ガン保険は治療に手厚い保険が良い。
    ガン保険の死亡時は支払われないよ
    だって、医者は死亡要因にガンて書かないもん
    大体、合併症で肺炎とかになるからね。
    保険屋はそこまで知ってるのさ。。。

  7. ハク より:

    どーもです。
    マスターキートンだかに保険とは期間内に、
    病気、死亡するかをかけるギャンブルだ的なことも
    書かれてましたし、そういった意味では今までの行き方と
    そんな離れたものでもないかもですね。
    依然、死亡後は医者の卵に解剖させる献体の遺族にあったことありますが、
    なかなか気持ちは難しいようですよ。
    葬儀も髪の毛だけ火葬するとかで、
    最終的に遺骨がくるのも何年かしてからだそうです。
    割り切れる方が少数派かもしれませんね。

  8. のっぽさん より:

    死亡で3000万もらったとしても30年後の物価がどうなっているかわからないから、個人的にはあまり保険は積極的にかける気がないなぁ。現金で持っていても同じだけど。。。

  9. G より:

    余命少ないと診断された時は死亡前に死亡給付金をもらえてしまうリビングニース特約ってのもあるぜよ
    俺も臓器提供可にしてるけど、別に深く考えなくてもいいんじゃない?っていうか
    考えるぐらいなら、生きてるうちに福祉活動したほうがよっぽどいいと思うけど

  10. umi より:

    >>裏ダブルさん
    だ、ダラブロヘビービューワーキター(゚∀゚)ー!!
    やはり身内に対してはそう思うのが(理屈ではわかっても嫌悪感を抱く)普通なのかもしれませんね。助かるかもしれない見えない他人の命よりも、尊重されるべきは遺族の慰みなのかというのは今後も議論の対象でしょう。実際今回これを書くにあたって少しそういうサイトを見ましたが、やはり意見は真っ二つですね。
    今後もう少し死後の世界観みたいなものが人々の間で変われば、亡骸に未練を持たないような文化になったら違うのでしょうけど… それはそれで寂しくもありますね^^;
    >>( ・ω・)y-~~~さん
    なんか例えが火曜サスペンスみたいなんだよなぁw
    保険は結果的にボッタかもしれませんけど、かと言って他に変わるものもありませんしねぇ…。んな事言って( ・ω・)y-~~~さんだってしっかり入ってるんでしょw
    >>ヨシホイさん
    あー、ちゃんと色んなところで比べてんすね。えらい!結果はともかくですが僕はそれすらしませんでしたしw
    臓器に関しては同じようなパターンの夫婦は結構いそうですね。大抵旦那があんま考えてないんですけどw
    >>魔さん
    保険証は社保っす!嫁の実家の麾下に入れられました(´・ω・`)
    保険は死亡時合計で3000万貰えるけど、三大疾病の際はその都度500万とかを一時金として…みたいなプランでした。死亡時の金額下げると思います。
    魔さんの葬式には妻も連れて行きますので楽しみにしていてください!
    >>椰子さん
    仰る事はわかりますが、「死んだ人間よりも生きてる人間の方が尊重される理論」で言えば、むしろ家族がいようが死んだら臓器は提供して、今後助かる人に役立ててもらうってなりませんか(;^ω^)??
    家庭を築いたら全てが家族の共有物というのは理想ですね!でもそれは息が詰まっちゃいますよ>< 時間さえも全てが共有物だと思うと逃げ出したくなるかもしれません…
    >>名無しさん
    なるほど。ガンで死んでも死因はガンじゃない・・・糖尿病もそうですね。それは考えた事なかったな
    ただ今回僕が入ったのは幸か不幸か「死亡」は死亡でお金が入って、ガンや糖尿病は罹ったときに死亡金から惹かれる形で一時金が入るようなので大丈夫??…かなw まあどっかで上手い事やってるんでしょうね。たしか42歳だかから保険料倍額ぐらいになるって言ってたし><
    >>ハクさん
    どーもです。保険もギャンブルかw誰かの病気や寿命がブックメーカーの対象になったりする日も来るのかな…
    >依然、死亡後は医者の卵に解剖させる献体の遺族にあったことありますが、
    これはどういう状況なんでしょうね??珍しい難病の方とか…?髪の毛以外持ってかれるって、それはさすがに嫌だけど・・・言ってることは臓器提供だって大差ないですもんね。臓器はよくて身体は駄目ってのも変な話だし、線引き…気持ちの落としどころ、心の拠り所をどこにしているかってのがこの質問で結構わかりそうな…考えさせられるお話です。今度引用させて貰います、どーもです。 
    >>のっぽさん
    うーん、そりゃ極論な気が。。いつ何があるかわからないか、そして死亡時よりは入院・手術時のための保険というように考えているので数十年後の物価まで気にしてたら何もできやせん><
    >>Gさん
    へー、そんなのあるんですか!でも死亡保険は自分のためにかけるものじゃないからチグハグな気もしますねw
    臓器提供は独り身なら何も考える事はありません(Gさんがもし独り身じゃなくなってたらすいやせん)。残された家族の心の問題が今回僕が考えさせられたテーマです!

  11. 椰子 より:

    なので僕は結婚しません(キリッ)

  12. よもぎ より:

    臓器提供は個人的には有りですね
    なんかこの世にもういない人なのに
    その一部とは言え、どっかで生きてるってのに
    妙なロマンを感じてしまいます
    たぶんキン肉マンに移植されたロングホーンの影響
    バッファローマン死んでなかった気がするけど

  13. ( ・ω・)y-~~~~ より:

    保険。。一切入った事有りません。インフルエンザ予防接種すら打てと命令されても打ちません。
    保険料分を自分で積み立てて、自分で投資して増やす方がいいです。保険屋も同じ事やってるだけで、胴元として手数料で払い込みの半分程抜いているだけですよ。金持ち程保険加入率が低かったと思われます。

  14. umi より:

    >>椰子さん
    どうぞどうぞ!!
    >>よもぎさん
    あー、どこかで「生きている」って、こういう感じ方もあるのか。ここまで前向きに捉えられたら最高ですけど、イザ愛する人の死を前に中々こうは思えないだろうなぁ…
    確かにアニメや漫画のそういう形見的な展開は燃えますねw
    >>( ・ω・)y-~~~~さん
                         \    _
                        r-''ニl::::/,ニ二 ーー– __
    ( ・ω・)y-~~~~ がマジレスした! ,/ :// o l !/ /o l.}: ::`:ヽ 、
                      /:,.-ーl { ゙-"ノノl l. ゙ ‐゙ノノ,,,_: : : : : : :ヽ、
                  ゝ、,,ヽ /;;;;;;;;;;リ゙‐'ー=" _゛ =、: : : : :ヽ、
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                 r―- ..__l___    `´            l   /   /: :
    意外っすね。そんなこだわりがあったとは。

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