9/8　　ライトライターライティング

もう四時半だと帰り支度を始める人、まだ五時ですねと次の現場に向かう人。

どちらが今僕のいる方とは敢えて言わないが、或いはウチがホワイトすぎるのだろうか？

今週から何がどうなったのかわからないまま再び黒船に乗せられてしまったアチキ･･･。いやいや、おかしいだろ。俺こないだから先輩についてリフォーム物件二人で回してたんやで？？

段々とやれる事が増えてきて、工具も揃えたりして案外この仕事も楽しいかもななんて思っていた矢先の出来事だった。

　「なんか○○さんが（ブラック会社の偉い人）来週から来れる？って聞いてるよ」
　「いや～･･･行きたくないが、どうしてもってんなら九月後半からかな？今リフォームやってるから」
　「うん･･･そう言ったんだけどね＾＾；」

じゃあなんで聞いたんだよと言わせておくれ。俺は地の底･･･翌週からブラック会社のとある施設にぶち込まれていた。

　「いくら協力会社とは言え専属契約を結んでいるわけでもないのにどうして勝手にスケジュールまで決められなきゃならんのじゃ！！！」

義弟に怒る。このブラック会社は義弟が以前まで所属していた会社で、今は協力会社（外注さん）として仕事を貰っている関係だ。僕は確かにここで随分仕事をしてきたが、しかし嫁の家の…ってややこしいな。ウチの会社を極楽電気としよう。で、ブラック会社を黒船電機とする。

僕は極楽電気所属である。黒船電機の仕事はやるが、それはあくまで極楽電気として受けたものであり、優先すべきは極楽の方だ。ただでさえ社長（義父）やベテラン勢の年齢が平均65近くて引退前に色々と技術を仕込んで貰わなきゃならんっちゅーのに、このクソ忙しいときにあんなブラックな会社になんて行きたかないわい！！！

　「と、言われてもなぁ･･･」

どうやら、義弟の返事を待たずにブラック会社の方で決めてしまっていたらしい（！？）。向こうの社員と組んでやる仕事なのでぶっちするわけにも行かない。リフォームは一人でも何とかなりそうだし、出来るならそっちへ行ってくれと。

　「いやいやｗなんで向こうが勝手に決めんだよ。俺は極楽の人間だぞ＾＾；」
　「それなんだけどさー、どうも向こうはそう思ってないみたいで･･･ｗ」
　「？？？」

聞けばどうやら向こう（黒船）は僕を極楽電気に在籍するブラック会社専属職人のような感じで扱っているというではないか！！それすなわち便利屋、否！奴隷だよ！

こうして今、僕は25歳の若者に仕事を教わりながら近い将来訪れる激務のための準備を進めている。救いなのはこの年下の先輩が、というよりこの会社の人間が皆良い人達という事だろう。これで高圧的な態度でやんややられたらストレスでハゲちまう。悪いのは会社の社風だ。

　（まあしばらくは仕方ないか･･･意見できるほど仕事も出来ないし(‘A`)）

悔しかったら自分で仕事を見つけてくればいいのだ。それが出来ない今は現状に甘んじるほかない。見てろよ、今にクーデターを起こしてやるけんのぅ。

　「え？うみさんパチプロだったんすか！？僕もパチスロ大好きなんすよ！ほら」

25歳パイセンはパチスロが好きすぎる若者だ。昨今珍しい2ｃｈも攻略誌もほとんど見ない剛の者で、情報源は友人とyoutubeのスロ実践動画だけらしい。どことなくスロ狂い君を髣髴とさせる憎めない子だ。めちゃくちゃ負けてるらしいが笑顔でそれを語れる強さ。

　「こないだも三重行ってきたんすよ、ほら！」
　「三重っつーとオールナイトか。ん？この人は･･･」

そう言って見せてくれた写真には知らない男性とのツーショット。恐らくはスロライターなのだろうが、誰だろうコレ。初めて見たな。

　「寺井っていうライターさんなんですけどね、超好きなんすよ！」
　「へー、その寺井って人は知りませんがオールナイト行くほどの情熱はいいね（59）」
　「ええ！わざわざ会いに行きましたからね。僕はこの人の動画しか見てませんよ！」
　「そんな面白いんですか」

と言うわけで後日、当然のように20時を過ぎた帰宅後に件の人の動画を見てみることにした。

　（あれ、思ったより面白いなｗ）

ハードルを上げられてた割に楽しめたのは意外であった。と言うのも、言わずともわかると思うが昨今のライターバブルで出てきた有象無象というか、そこらかしこでスロ「タレント素人」が増えすぎてもはや名乗ったもん勝ちみたいな状況に辟易としている。さらにやってる事も一部を除いて稼動・知識共にお粗末過ぎるだけじゃ飽き足らず、店とグルになって･･･なんて事さえ疑われているのだから百害あって一利無し。彼らに対し苦々しい想いしかなかった。

それだけに25パイセンみたいな人がいるのは意外だったし、動画の人みたいなマジメにやってる人もいるのだな～と若干考えを改めたくなるような出来事だ。そう言えばスロ狂い君も必勝本だかのライターが大好きだったし、スロが本当に好きな人はどこかそういう傾向でもあるのかもしれんね。

　「動画見ましたよ。黒バラのオマージュのやつ面白かったですねｗ」
　「ええ。黒バラっての知らないんすけどあの人毎回負けすぎてて面白いっすよね！」
　「ちなみにこの人はどこの雑誌で書いてる人なんですか？」
　「え？書いてる･･･？何をッスか？」
　「え･･･いや、スロライターなんですよね」
　「え？ライターだと書くんですか？」
　「え（；＾ω＾）」
　「多分動画だけじゃないっすかね」
　「え（；＾ω＾）えええ･･･」

マジかよ…と思ったが、後々考えてみるとこれは言葉の意味を知らないというより、響きありきで育った世代とのジェネレーションギャップのようなものなんじゃ･･･つまり、「ライターが動画に出るようになった」んじゃなく、「動画に出ている人がライター」という認識で覚えた弊害なのかもしれん。そもそもライター名乗ってる人が記事も書かずに動画でやんや騒いでればそう思ったって仕方が無いよな。

もはやスロライターのライターって部分は「Writing」ではなく、「lite」の方と思うべきなのかもしれない。現状そう言った方がしっくり来るし、大半はその認識で間違いもない。

　「しっかしいいなぁーー。自分もうみさんみたいに破天荒に生きてみたかったっすよ！毎日毎日仕事ばっかで嫌になっちゃいます」
　「う～ん。いいかどうか･･･ツケはこれから払うところだからねぇ＾＾；」

仕事を教わりパチを教える。案外いいコンビなのかもしれんが情けなさが募るばかりだｗ