「ちょっっ!!?」
眼前にて、チキン南蛮を貪り食っていた魚君の動きが止まった。
(相変わらず気持ちの悪い野郎だな…)
僕はそんな同居人を見て改めて豚だなと思う。と、魚君は何やらチキン南蛮のお皿に載っている黒いナニカを指して憤慨している様子。
「おいおいおいおい、うみよォ… どういう事だよこれ?」
「ん?」
豆粒程の大きさの黒いナニカ。魚君の指差す先にはその何か得体の知れぬ黒い物体が鎮座しており、それはチキン南蛮に添えられていたサラダの中に紛れていたらしく、初め僕は植物の種か何かだと思っていたが、どうも違うらしい。
「これ、どう見ても羽が生えてるんだが…」
「…あ、ホントだ。ハエかね?」
断定は出来ないが、恐らくは蝿なんじゃないかというのが僕らの結論。
「ありえねーわ。気持ち悪くなってきたし…」
「・・・・・」
不思議なもので、先ほどまでガツガツと豚を髣髴とさせる勢いで食い漁っていた男がたった一匹の蝿を自分の皿に認めただけで以降の品に食欲が失せるというこの現象。一緒に食べていた僕は別段そこまで気にならなかったが…
とは言えこのチキン南蛮、定食の類ではなくお酒のつまみに頼んだはずなのになぜか中央に置かれず魚君のモノとして扱われていた事がそもそもの疑問なのだが、そんなわけで僕は「ちょっと頂戴」と遠慮がちにチキンをニ切れ程しか食べさせて貰えず、結果サラダゾーンは未開拓に終わっていたわけで。その差が現在の両者の心持ちの具合へと如実に現れたと言ったところか。
「とりあえず店員呼ぶか」
「だな」
チーン。呼び鈴を鳴らして店員を呼ぶ。かれこれどうこうと事情を説明すると店員は青ざめながら謝罪の言葉を並べ奥へと駆け込む。そうしてバタバタと出てきて、
「すすすっ、すみませんでした… ただいま新しいのを…」
「いや、もう九割方食べ終えてたしいいですよw」
何やら傍から見ればわざと蝿を入れたクレーマーのようにさえ見えかねない自分達の姿に僕はふとおかしくなり、店員へとニコやかに対応するのだが、しかしそれも前述のとおり僕がサラダゾーンに手をつけていなからこそ出来る対応なわけで…
「・・・・・・」
当の被害者魚君と言えば、これで納得行かないのか相も変わらずブスっと押し黙ったまま。しかしこの後何か一言言うのかなと思っていたらそんな事は無く、結局チキン南蛮の代金は結構ですのでと向こうが改めて言ってきてこの騒動は終了と相成った。
「…チキン南蛮無料じゃ不服かね?」
相変わらず押し黙っている魚君に聞いてみる。一体どこが彼の納得できる落としどころだったというのか。
「いや、無料は当然だよ。そうじゃなくてさ、運んだヤツに謝らせてもどうしようもねえじゃん?なんで作ったヤツが一言来ないのかな、ってさ」
「ふむ。でも会計の時にさすがに一言来るんじゃないの?」
「それならいいけど、でもすぐ来ないって時点でなんかなぁ…」
そういえば少し前に、バラエティ番組だか何かで似たような状況、つまり食事に異物が混入していた時にデートをしている男性側がどういう態度で店へと接するべきか、というのを見た記憶がある。
怒鳴り散らす人、謝罪と賠償を求める人、一言注意する人、何も言わない人。対応は様々なものがあったが、確か一言、穏やかに注意をして度量を見せ付ける紳士が一番印象がいい(当たり前かw)という結果に終わった気がす…
「ってちょwww」
そんな事を話しながら、運ばれてきたスープを飲んでいたら今度は中から伝票の切れ端が出てきた(;^ω^)
「今度は俺かぁw」
「…いや、笑い事じゃねェから」
チーン!!!!!!
魚君が物凄い速さで呼び鈴を鳴らす。怒りさえ感じるその様は、仏の顔は三度までだが魚の顔は二度までらしいという事を雄弁に語る。
「すすすっ…><」
先ほどと同じ店員がやって来たのだが、事情を説明するともう今にも倒れそうな様子である。
(かわいそうに、酷い日にシフトに入っちゃったね…)
僕は正直紙が入っていたぐらいどうでも良かったが、相方がそれを許さんとばかりに
ついにクレーマーの常套文句、「責任者を出せ!」が炸裂。
傍で見ていた僕は魚君がこれほど怒っているとは思えず意外だったが、しかしウエイターである店員君に文句を言っても始まらないのはごもっともだし、そもそも魚君に言わせれば呼ばなきゃ来ない方がおかしいんじゃ!!との事であり、う~ん。
「すみません、お会計の際に出て行くつもりだったんですが…」
「いや、そんな事聞いてるんじゃないんですよ。つい五分前に蝿が入ってて??今度は伝票の切れ端ですよ??あなた、飲食業でこういった衛生管理が・・・グダグダグダグダ」
やがてやってきた店長、料理人に魚君の説教が始まる。彼は昔ほっかほっか亭でバイトしていたからそこらへんには過敏のようだ。
「本当に申し訳ないです…何かありましたらこちらへ連絡を…」
「あ、いや。まあ次から気をつけてくださいって事で^^;」
しかし僕も一応飲食店で半年程バイトをした事があるのだけれど、ここらへんの感じ方は人それぞれだもんなぁ。って、まあ紙と蝿じゃあ怒りも違うか。
それにしても、こういうときに僕は比較的ニコやかに対応しがちなのだが、しかしだからと言ってそれが一概に良い事とは思えず、むしろ魚君のように毅然とした態度でハッキリと言える様に憧れる時もある。
別に僕のスープ代が無料になっていなかったから言ってる訳ではない。
コメント
優しい対応じゃんw
今は写メとって、ツイッターってやつで晒すんじゃないの?^^
店には『つぶやいっちゃおうぅぅかなぁ』(´・ω・`)チラ って言えば1万円ぐらい包んでくれるんじゃない?w
ハッキリものを言うのも、ニコやかに言うのも、極力、言葉使いに気を付ければ大丈夫だと思いますよ。
ん?そういえばumiさんって・・・口が災いしてトラブルを起こす事に関しては超A級だったんだ・・・
こうしてネットで炎上させるんですね
たちわるいっすね
だがそれがいい
年賀状の試し書きなのかオッキーさん、デスノートに金正月って書こうとして間違えたでしょ?w
謝罪があっただけいいですよ。
未だにトラウマですが自分は松屋で生ハンバーグ食わされ食中毒になりました。
お客様センター(笑)に電話したら、
・病院で結果が出ない限り謝罪はしない。
・加熱加工してから冷凍出荷してるので生でも食中毒になるような菌はいない。
・お客様のお腹が弱いんじゃないですか?
って言われて終わりました。
2度と行かないと決めました。
>>( ・ω・)y-~~~~さん
ツイッターもありそうですが、食べログに晒すぞ!ってのが流行ってる(w?)そうですね^^;もう少し強気に出たら結果も違ってたかもしれませんが、まあそういうのは他の方に任せましょう。
>>0.34さん
言われてみるとここ最近口で失敗した記憶が無いなぁ… 一体どうした事でしょう!?
「君はハッキリ物を言うねェ^^;」みたいな事を何人かには言われたけど…って、相手が我慢してくれてただけかな('A`)
>>kenjiさん
そんな影響力のあるブログに、私もなりたい
>>( ・ω・)y-~~~~さん
不謹慎だぞ!!って書こうと思いましたが珍しく一捻りあったので25点
まあまあね
>>ゼクシイさん
わおwお客様のお腹を疑うとはniftyもびっくりの対応(;^ω^)ご愁傷様です。
ちなみに病院行って証拠突きつけてやらなかったんですか?
勤務先が食品関連の会社なのですが、異物混入にはすごく敏感ですね。
営業マンだと先方の工場まで行って現物を確認し、平謝りすることも珍しくないそうで。
異物が紙切れと虫だと、後者の方が「なんじゃこりゃー!!!」ってなると思うし、食欲無くすのもわかります。
最後のオチの部分、チキン南蛮だけじゃなく紙が入ってたスープの代金も無料になっててもいいような気がしますが・・・。
失敗は誰にでもある事だけど、失敗した後の応対でいいお店か悪いお店か判断できますよね。
友人がいい雀荘と悪い雀荘の見分け方として、トイレに行った後におしぼりを出してくれるかそうでないかで判断すると話してたのを思い出しました。
>>umiさん
腰が抜けるほどの体調不良で病院に行ける状態ではなかったのと、前途の対応で何かが折れてもうどうでもよくなっていました。
ある程度回復してから病院に聞いたら「発症してすぐに来ないと菌は出ない」とのこと。
一応寝グ○したパンツを採っておいたのですが「乾燥していてはダメ、鮮度が命」と教わりましたw
食中毒になったらすぐに病院がオススメです。
>>椰子さん
>失敗は誰にでもある事だけど、失敗した後の応対でいいお店か悪いお店か判断できますよね。
正しくこれですよね。僕のスープ代が無料になってなかった事より、蝿のすぐあとにこのような事があったのが許せないと魚先生は憤慨しておりました。
雀荘のトイレ後のおしぼりってめちゃくちゃ普通だと思うのですが…^^; 僕はふんぞり返った常連がいるかどうかが判断基準っすね。
>>ゼクシイさん
なるほど。これはいい事を聞きました、どうも!賞味期限切れはともかく、いまだ明らかな食中毒っぽいのは未体験なので参考にさせて頂きます!ご愁傷さまっしたw