6/28  大海物語inカンボジア その3

・二日目 その2

アンコールワットを出ると入り口近くの広場でAKが日陰で待っていた。

 「待ってる間何してるんでしょうね?」
 「さぁ…」

翌日からAKとは別の人のトゥクトゥクをチャーターする事になるのだけど、その人もやっぱり僕らが遺跡観光をしている間はひたすら「待つ」スタイルだった。現地にいる間に意識して観察した感じ、この国の人は本を読むといった習慣はあまり無さそうだし、携帯でネットなんてもっと無い。聞いてみると知り合いと話しているかただ寝ているかだそうだけど、いつ遺跡から戻るかわからない客をひたすら炎天下の中待ち続けるってのは大変そうだ…

なんて思ってる間にアンコールトムへ。こちらもアンコールワット同様当時の王が作らせた遺跡。違うのはアンコールワットが墓として作られた事に対し、こちらは城として居住用に作られたという事か。

ちなみに、各地に残る巨大な遺跡は全てそれぞれ年代の違う王が作らせたものらしい。権威の象徴としてだろうが、それぞれの性格?のようなコンセプトの違いがあってそういう観点から見てみると面白い。

例えばこのアンコールトムを作らせた王は相当自己顕示欲が強かったのか、中央に位置するバイヨン寺院には200前後にもなる像が彫られているが、その全てが創建者であるジャヤヴァルマン7世の顔という説がある。

観世音菩薩の顔という説もあるが、火のないところになんとやらだとぼかぁ思いますね。\(^o^)/ 

さて、そのバイヨン寺院ですが、訪れるなり現地人の兄ちゃんが話しかけてくる。
 
 「ワタシ、日本デ勉強シテタ。アナタ達何処カラ来タ?トーキョー?オーサカ?」

なんと、日本語だ。

 「こっちは東京、こっちは○○」
 「ワォ!ワタシ日本大スキ!コッチ、来テ」

そう言ってぐいぐい僕らを引っ張る彼。なんでも、学校の授業の一環?の自由研究の題材として、ここで日本語のガイドをやっているとかどうとか。

 「大丈夫ですかね?」
 「さあ…」

それにしても相変わらず階段が急である。今よじ登っているのはライブラリー=図書館との事らしいが、動物避けか何かでこうなっているのだろうか?

 「ホラ、アッチ。日本人ガ遺跡、直シテクレテル」

そう言って図書館の高台に登り、彼の指差す先には工事をしている集団があった。

 (へぇ~・・・!!)

どうやらこの遺跡の修復作業をしているのが日本の企業らしい。(調べたらこのNGOかな?)海外に出るとこのように日本の企業による地域支援をよく目にするのだが、その度に自分は何もしていないというのにとても誇らしい気持ちになる。

また、同時に地域の人々が大変感謝してくれていることも伝わった。だからこそ、目の前の彼は親日家でありこうしてガイドを買って出てくれたに違いない!

…と、一連の流れですっかりそう思わされたんだから、全てが計算だとすれば巧妙である(笑)

そのまま「ガイド料」の話とかは一切触れずに、僕らの前を歩いて勝手にガイドしていく彼。一応ガイドとしてのツボは抑えているようで、写真を撮るためのベストスポットはその都度教えてくれる。

前述した「問題の」顔。紹介している場所によってまちまちだが、全部でこのような像が180~200個ぐらい見つかっているらしい。もしもこれら全てが自分の顔だとすれば相当だろう。

道中、お堂に案内されるとそこには信心深そうなおばあちゃんがお祈りをあげていて、僕らが傍を通りかかると線香を手渡し「ここに差しなさいな」、とジェスチャーしてくる。

 (おお~、さすが仏教大国。粋なサービスだなぁ)

なんて平和ボケした観光客は為すがままに線香を受け取りますが、受け取ったが最後、線香を差し終えると恭しくお守り?のミサンガを付け…

そうして、「ワンダラー」とお布施を要求してくるのです。日本語で言うと「完全な押し売り」。

 (ファッキン!金取るならやらねーよ!!!1)

と思っても後の祭り。既に「商品」であるミサンガは固く結ばれています。なので面倒くさくなって、まあ1$=100円ぐらいならいっか…と払ってしまうのですが、最初はともかく後の遺跡でもこういう事がたくさんありますので以後は注意したいですね。金額はともかく、為すがままにやられるのは腹が立つ!!

アンコールトム最大の撮影スポット(?)、像とキスしているように見える場所。こういうのはガイドがいないと知りえない情報ですね。

 「ココデ、オワリデース」

一通りアンコールトムを回り終えるとガイド役を買って出た彼はポケットから紙片を取り出した。

なんでも、内戦時に埋められた地雷撤去のための支援願いだそうで、それに伴い学校に行けない子供達のためにも寄附を要求される。俺はこのためにここでガイド役を買って出ているんだ、と熱弁が始まった。

 (おい、学校の自由研究って設定はどこ行ったんだ!!1!)

ゆうたさんとも、さすがに無料は悪いからチップをあげましょうと話していたところだったのでお金を払うのはいいのですが、こういう風に言われるとちょっと…ね。

まあいっかと二人で5$渡そうとすると更にもう1枚紙を取り出しサインしてくれ、と。学校に提出するのだそうだ。

 (あ、その設定生きてたのねw)

もう一枚の紙にはこれまで寄附をしてくれた方々が値段と共に名前を書いて…ひい・・ふう・・、僕らは五人目の犠牲者のようだ。

 (しかし…)

 ・○○  70$
 ・××  30$
 ・△△  50$
 ・□□  20$

 (おまえら払いすぎだろ(‘A`))

名前的にアメリカ人っぽいけど、70$とかアホかっちゅーねん。大体こういうガイドの相場は2$前後とネットに書いてあるんだぞ!?それとも後が多く払わざるを得ないように「サクラ」として自分で書き込んだのかもしれないが…

僕らはそっと5$ずつ渡してその場を後にした。実際それぐらい働いてくれたとは思うしね。

バイヨン寺院を抜けるとそのまま歩いて行ける距離に遺跡が何個か並んでいる。これら全てを総括してアンコール・トム〔=大きな都〕というのだ。

道中の木陰で休む人達。ハンモックを吊るす人の姿もあった。AKの姿はここにはないが、トゥクトゥクのドライバーは休み時間はこんな感じなのかな。

バイヨン寺院から徒歩三分ぐらいの場所にあるパブーオン寺院。

「空中参道」と呼ばれる中央通路脇にある溜池で泳いでる人がいた。無理も無い、気温は35℃前後もあり暑くて熱中症になりそうだ。にしても衛生面は大丈夫なのかこの池?相当淀んでいるが…

パブーオンはピラミッドを思わせる巨大な寺院。ちなみに名前の由来は「子隠し」だそうで、生贄を奉る祭壇としての役割があったのかもしれない。地面に点々と置かれている石は「椅子」の役割なのだろうか、それとも…?

ここも銃痕が酷い。

 「おお!!」

このパブーオン寺院は後ろから見ると涅槃仏のように見える。偶然なのか、ちょうどお腹に当たる位置に人が入れる空間があり、加えて「子隠し」という響き… うーむ。

 *当時はこう思ってたのですが、帰ってから調べたら子隠しとは「神隠し」的なオカルト話ではなく、言葉どおりに当時敵対していた国から王子を守るために一時的に王が子を隠すために使った逸話がある事から付けられたのだそうです。勝手に解釈し納得してましたがとんだ勘違いでした(‘A`) 

パブーオン寺院を出ると、今度は長い長い石畳の参道が続きます。通称「象のテラス」。壁面に象のレリーフが彫ってある事からその名が付いたらしい。続いて「王のテラス」なる、似た様な石畳の参道が続き、その対面には塔がいくつも立ち並ぶプラサット・スゥル・プラットという遺跡群も。

 (み、水・・・)

しかし、正直それどころではない。王のテラスを抜けた時点で既に13:20分。実に3時間半も歩き通しだ。

先ほど溜池で泳いでいた人もいたが、とにかく暑い。朝から既に500ml入りのペットボトルを4~5本飲んでいるが、一度もトイレに行きたいと思わないぐらい全てが汗となり溢れてくる。正直、今回の旅行で何本水を買ったか覚えていないぐらいである。

北斗の拳の第一話のケンシロウを彷彿とさせる弱弱しさを見せ、我々は水を売っている場所を探し…

ここで図ったように配置されているお土産屋さん(笑) バイヨン寺院を抜けてから王のテラスまで歩く道中どこにも水を売ってる場所がないため、冗談抜きに砂漠に出現したオアシスに見える。ここなら少しばかり高く水を売られても買ってしまうね。

 「オニーサン!オミズ、ワンダラー」

お土産屋ではそこらかしこで「オニーサン」という日本語が飛び交う。別におばちゃんが言ってても気にならないが、小さな子供が言っていると悲しくなる(´・ω・`)どうせならもっと美しい日本語を覚えて欲しいな…

それはともかく、水一本が1$は高い。相場としては普通0.5$で水一本のはずである。少しボッテる遺跡周辺のお土産屋でさえ、高くても0.75$とかなのに・・・なんたる強気な商売。日本で言うと自動販売機の富士山価格である。

 「OK!two water please^^」

しかし買う。水がどれだけ重要か知るためには安い授業料だ。

休憩し、人心地がついたら次の遺跡へ。名は知らぬ遺跡。ここだって日本にあれば相当もてはやされるだろうに、悲しいかな近くに大きな遺跡がゴロゴロしてるからどうしても迫力というかありがたみが薄くな・・・

 「ワタシ、日本デ勉強シテタ。アナタ達何処カラ来タ?トーキョー?オーサカ?」

 「「!!???」」

 「ワタシ、オーサカ!」

どこからともなく先ほどと同じ台詞を吐く男が現れた。もちろん先ほどとは違う男性。そしてやはり学校の課題だといい、勝手に僕らを誘導し始める。

 「・・・^^;」
 「・・・ハハ^^;」

ゆうたさんと思わず顔を合わせて苦笑い。断る間も無い。

…が、ここはブイヨン寺院に比べて非常に小さな遺跡。たいした見所もなくあっと言う間にガイドは終わり…

 「実ハ…ワタシハコウイウ活動ヲシテイマース」

そう言って見せてきた紙は先ほどの説明文とは違うものの、内容はほとんど同じものが印刷されていて… 「オーサカ」という地で勉強して…などの件もそうですが、これは完全に組織的にやっているとしか思えませんね。恐らく各遺跡に担当がいるのでしょう。金額を書くのは後の集計でチョロマカされないためか…?

 「パチ屋の打ち子集団みたいな連中っすね」
 「東京じゃなく大阪で学んだって辺りがまた嫌らしいw」

ここはお金が無いと言い張ってビタ一文払いまへんで。

 (む!!)

打ち子君二号の追撃を振り切り、お互い好きなように散策しながら写真を撮っていると、これまた見たようなお堂の傍でこれまた見たようなおばあちゃんが昼寝をしている。なんか光の具合で後光が差してるようにも天に召される直前のようにも見えるけど、傍にパトラッシュが寝ていないのが大変悔やまれる。

 (どうせここも押し売りみたいなお祈り商法やらされるんだろ?)

君子危うきに近寄らず。

人間とは学習能力の高さで今日の栄華を極めた生き物である。その学習能力の高さが真価を発揮するのは危険回避を於いて他なりません!!

 (・・・・・)

で、なんで僕の腕にはカモの証であるミサンガが増えてるんでしょうね…

実はこのおばさんをスルーして近くで写真を撮っていたら、どこで気配を察知したのか火をつけた線香を持っておばあさんが現れまして、例によって線香を手渡してきました。

しかしつい先ほどのアンコールトムでの経験があるため、この後の展開はわかっています。僕は拙い英語で

 「I have no money!」

と、ポケットの中を漁るジェスチャーを交えながらお金は払えないよ!とアピール。実際この時僕はドルを持ってなかったのですが、するとおばあちゃん、菩薩のような微笑でウンウンと頷きながらそれでも僕に線香を手渡してきます。

 「I don’t have money,OK??」

僕は再度お金が無い事を強調しますがおばあちゃんはウンウンと頷き、そのまま手招きをし僕に着いて来いと促すのでした。

 (おお~、さすが仏教大国。お金の多寡は関係ないんだな!開口一番ノーマネーと言ってしまった自分が恥ずかしいぜ…)

僕は感心しておばあちゃんの後に着いて行き、促されるまま三礼をし、促されるままミサンガをつけ・・・ 

 (え?ミサンガまでくれるの??)

僕がそう思った瞬間、

 「ワンダラー」

おばあちゃんの無情な声がお堂内に響き渡りました…

 「ノーーーーーーーーマニー!!!!!!!!」

期待を裏切られた感もあり、僕は若干切れ気味に叫ぶのですが、思えばおばあちゃんは英語がわからなかったのでしょう。若干向こうもキレ気味に「ワンダラー!」とだけ連呼します。

けど無い物は仕様がない。言葉が通じないので身振り手振りでお金が無いとジェスチャーするのですが、するとおばあちゃん、僕のポケットを順々に探り始めまして小銭入れのふくらみを見つけるとなんだこれは!!と言わんばかりにキーキー喚きその一点を指差します。

僕はお金なんて無いよと小銭入れを見せるのですが、正確にはドルが無いだけで小銭入れの中には後ほど両替しようと思っていた日本のお金が入っています。

 「・・・ッ!?」

ババアは目聡くもその中にある一万円札に手を伸ばしたので僕はそこで「NOOOOO!!!」と言い距離を置き、仕方ないので百円玉を手渡し「This japanese One dollar!!」と言い残し逃げるように去りましたが、おばちゃんは不服そうに僕を睨みつけるのでした。

 (一瞬でも信じた俺が馬鹿だったよ^^;w)

しかしこうした経験を元に後々意識して観察してみると、遺跡にはこのミサンガを付けてる観光客が存外多い事に気が付きます。中には四つや五つのミサンガを巻いてる人もいて、彼らに共通しているのが人が良さそうというか気が弱そうというか、なんだか旅慣れていないように見える点。

訪問販売でも玄関先にここは押しに弱いから買ってくれるぞ!みたいな「カモ情報」を書き込むという話を聞いた事がありますが、このミサンガは正しくその役割を担っているのかもしれませんね…

遺跡の傍では子供達が何か買ってとわいわい集まってくるのですが、ミサンガの多い人を狙っている傾向があるように見えましたw

 (恥ずかしいから外しとこう(///))

僕はそっと足にミサンガを巻きなおした。

 to be continued → 

コメント

  1. ( ・ω・)y-~~~~ より:

    昼間暑い時にウロウロしているのは観光客しかいないんじゃ?こっちでも似たような感じがする。朝夕か夜しか出歩かないのがいいよ
    流行っているお店のほとんどは、本土から来た人の店で、地元民はそこで働いてるって感じ・・・
    商売べたなのかやる気が無いのか(´・ω・`)

  2. 三重県人 より:

    umiさんの顔にカイジのモザイクがかかってないけど大丈夫ですかw
    打ち子くんの年いったバージョンとかの設定とかはあるんでしょうかね

  3. kenji より:

    アンクール輪ット!!

  4. ヨシホイ より:

    僕も海外で現地の二人組に「日本語勉強シタイカラ案内サセテヨ!お金はイラナイヨ!」と言われたので、繁華街の案内やおススメの場所やレストラン等教えてもらって「ありがとう!じゃあまたどこかで!」とチップも渡さずに帰ったのを思い出しましたw
    ホントに水が当たり前にある日本、ましてや水道水飲みまくり余裕な静岡は最高だなって再確認できますよね

  5. umi より:

    >>( ・ω・)y-~~~~さん
    偏見が大きいですが、なぜか熱帯地方の方ってやる気ないですよねwフィリピンしかり、沖縄しかり。でも行くとそれもわかる気がする^^;イザとなったら野宿できるってのが大きいのかなw
    >>三重県人さん
    あー、モザイクかけるとせっかくのキススポット写真が胡散臭くなったのでそのままにしました^^;まあこれぐらいなら…
    押し売りガイド軍団はそういえば若い兄ちゃんばっかでしたけど…歳行ってると押し売り線香売りになるんじゃないんすか?しかしあちらの平均月収考えるとこの集団恐ろしく稼いでると思うんですが、どこの国でもグレーゾーン攻めるやる奴が儲かるようになってんですねw
    >>kenjiさん
    差し支えなければ、どのような心理でそのコメントをするのか教えてくれませんか??
    >>ヨシホイさん
    日本人ならその状況で大抵チップ出すの知ってての言葉でしょうが、アテが外れていい勉強になったんじゃないっすかね、その現地二人組もw
    静岡最高だなとずっと思ってましたが、やはり都会暮らしが長かったせいかどこ行くにも遠いなと最近感じています>< やっぱ最初は不便に思ったけど電車は便利や