9/24　　偽名特戦隊

オアシス探しは五軒目に入っていた。

やはりというか、なかなか良い店は見つからない。大抵がフリーをもうやってなかったり、健康麻雀（＝ノーレート）に切り替えていたりと打つ以前の問題で、ようやくフリーをやってる店を見つけてもハウスルールが独特過ぎて敬遠したかったりサンマだったりと…　そもそも営業しているかも怪しい店すらあった。

　（どうしてもノーマルルールで打ちたいならもう点5で我慢するしかないのかな？？）

諦めかけていたその時だった。

　（お？〇〇が来店イベ？？）

偶然、以前修行に行っていた某渋谷の摘発店で一緒だったプロがゲストにやってきているというツイートを見つけてしまった。割と最近できたばかりの店なのだが、ホームページには「健康麻雀」と書かれていたのもあってノーレートだと決めつけ早々に候補から除外してしまっていた場所だ。

　（健康麻雀の店にプロをゲストで呼ぶかね？）

物は試しにと電話して聞いてみると、ノーレートもやっているというだけで基本はフリー雀荘というではないか。そしてレートはピンという事で、ルールも極めて普通で文句がつけようがない。

　（こんな身近にオアシスがあったとは…）

それもこれも看板やらホームページに細かくレートが書かれていないせいなのだが、まあこのご時世じゃ仕方ないか。〇〇プロに感謝だな。今度ゲストで来た時に顔を出してやろうと思うので連絡はそれまで保留だ。

　（さて…）

経験上プロを呼ぶような店は雰囲気もマナーも客層もよろしい（パチ屋と正反対だねｗ）。そしてルールがマトモとあれば新たな根城は決まったようなものなのだが、新規の店ではやらねばならぬ儀式がある。

そう、偽名であるｗｗｗ

前も書いたことがあるが、僕は雀荘でまず本名を名乗ることは無く、別段深い意味はないのだがもはや慣例となっている儀式のようなもの。一体いつからこんな風になってしまったのか覚えてないが、どういう因果か今回の店は高校時代に雀荘童貞を捨てた場所の跡地に居ぬきで入った店舗である。つまり数少ない本名を名乗っていたお店なのだ。

　（まさかまたここに通うことになるとはな…）

学ランを着て通っていた高校時代から、こんなに大きく（）なりましたよという万感の思いを込め、凱旋に相応しいこれまでの偽名人生の集大成となるような名を名乗りたいではないか。

そうして選出された偽名こそが「戸辺」である。

これまた以前書いたが、この名前自体は過去に何度か使った店もあるが、今回は一捻りして下の名前も変えてある。

　“戸辺　勇”

この響きでピンと来た人はおめでとう、オッサンだ！

麻雀用語である「飛ぶ＝ハコテン」という意味と、さらに某昭和アニメの融合。昔、「鴨頭（かもがしら）」という偽名を使っているオッサンを見かけてなんてお茶目な名なのだと感心した過去があるのだが、ようやくそれに並べると自負できる、長年温め続けておいた偽名を使える時がきたのだ…が、

　「となべさん、出親です」
　「！？」
　「ラストー！優勝となべさんです」
　「！！？？？」

敢えてフリガナを振らずにこのギャグセンスを噛みしめて貰おうと思ったのが徒となったようだｗまさか「とべ」を「となべ」と読まれるとは思いもしなかった。

　「あの…“とべ”です」
　「え？あ、ああ・・すいません」

　（この分だと苗字と名前の関連付けまでいかないな…（；＾ω＾））

渾身のギャグ不発！そのギャグの説明をさせられたような屈辱一つ！加えてもう一つ、思わぬ誤算というか、当然っちゃ当然なのだが…

　「あ…ども」
　「やあ、久しぶりだね」

前に通っていた雀荘の常連がこちらの店にもいたという事であるｗ　

というか、最近向こうの店で見なくなったと思っていた人なのだが、なんてことない、僕と同じく向こうに見切りをつけこちらへやってｋ

すると当然起こる偽名のリスクｗ　

そうなのだ。向こうの店では田中（仮名）と名乗っていたのだから、元常連さんからしたら悪気は一切ないまま生まれるこの会話。偽名が偽名でバレるというわけのわからない展開だが、気恥ずかしい事に変わりはないｗ

　店員　「どうぞ、戸辺さん。コーヒーです」

　（つーかそこまで親しくなかったのになんで名前覚えてるんだよｗ）

うかつであった。例のプロのゲストの日に遊びに行って、そこで初めて「え？うみ君じゃん！？ひさびさ！え？戸辺？名前違わないｗｗ？」みたいな感じでバレるのを想定していたのだが…ｗ

　（まあ実際、俺の名前なんてどうでもいいわな(´･ω･`)）

どうでもいいと思いつつも、偽名を使わずにはいられない。