こういう仕事をしていると年に一度ぐらいは質の悪い客に当たってしまうのだが、メーカーから依頼される「代品交換」という仕事を請けるとその傾向がより顕著となるようで。
代品交換とは読んで字の如く、購入した商品に何らかの不具合があった際に品物を交換することだが、我々は電気工事屋なので当然対象は工事家電⋯主にエアコンやエコキュートになる。交換理由は純粋な初期不良がほとんどであるが、中には言いがかりのような案件も多々あり⋯

聞いた瞬間嫌な予感しかしなかった。3度目ということは必然、これまで既に2回交換をしているということだが⋯まず今日日の家電で2度連続で初期不良なんて事が稀だし、以前取り付けた業者でなくわざわざこちらに依頼してきたというのも何やらキナ臭いものを感じる。
やはり以前、同じようなケースがあったのだがそのときは相当なクレーマーで、5度目の交換でついに「出禁」を喰らっていた。つまりお金は返すのでもうウチの製品を使わないでくださいと販売店とメーカーがさじを投げたのだ。それぐらい悪質で面倒な客だった。
今回も似たようなケースだろうか。
交換理由は「水ハネ」と聞いている。エアコンを普通に使っているだけなのに室内機から水が飛び跳ねてくるという事象。結露や排水障害という理由が主で、要因として内部の汚れや排水ホースの詰まりというケースが多いのだが⋯今回は交換してすぐのクレームだったそうなので可能性は低そうだ。となると室内機を取り付けている壁面が日光などで高温に晒され著しい温度差が生じ結露が⋯というパターンも考えられるが、聞いたところそういう場所でもないらしい。
なので初期不良という事で⋯まあ稀にそういうケースもないわけではないが、2回連続というのは滅多に有ることではない。ちなみに先に書いた「出禁」の客も、4度連続で水ハネを主張していたそうだが⋯クレーム界隈でそういう指南書でも出回っているのだろうか(;´∀`)

えっと⋯それ?

⋯あー、どうぞお気になさらず。何かあったときのための記録ですから

⋯いやいやいや??
さて、件のお宅に伺うとスマホをこちらに向けながら嬉しそうに「お客様」が背後に立つ。初手からわかる典型的クレーマー行為。昔からこういうのが一定数存在するのだが、工事中の動画を撮りながらずっと監視してくるやつにマトモなのがいた試しがない。よしんばそれが工事の記録をつけるためだとしてもだ、こっちになんの断りもなく撮っていいわけねーだろが!!!

いやーw最新版が出るまで交換待って貰ってたんだよね♪

はい?
そして意気揚々とクズ行為の武勇伝を語り始める。なんでも交換品は同じ型ではなく絶対に最新機種にしろと譲らなかったらしく、わざわざ新しいのが出るまで交換を待たせていたそうで⋯そしてそれを誇らしげに僕らに語る神経よ。
すごいっす!!とでも言ってもらえると思ってるのだろうか?

ねえ、ちょっとこれ見て

!!?
そんなわけで細心の注意を払ってとっとと帰ろうと作業していたわけだが、そういうときに限って何かが起こるマーフィーの法則。げに恐ろしき事が起きてしまった。

この傷なんだけど

!!?
なんと、床に引っかき傷のようなものが見つかったそうだ。他人事みたいに言っているのは僕の作業していた場所ではないので当時の状況がわからないから。エアコンを交換していた周辺はマットなどを敷き養生を怠らなかったのだが、そこに至るまでの動線上に出来てた傷らしく⋯

んん?それ今回の工事で出来た傷なの??
指摘された先輩もまずそう思ったぐらいだったそうで⋯作業場と少し離れた場所のため、誰もそこの床を意識して見ていた者がなく、果たしてそれはいつからあった傷なのか正直な話誰一人として心当たりが無いのだ。

ここに傷は絶対になかったのを覚えてる!お前らのつけた傷だ。

と、言われてもなぁ⋯
傷の感じからして本当に今日の工事でついたのかもしれないと思わされれるものはあるのだが、はっきりとした確証もない。それなのに、「お客様」は水を得た魚のように騒ぎ立て⋯その姿はどこか嬉しそうですらある。

いや~⋯辛いっすわ。大事に住んでる家が傷つけられて自分の身が削られたように辛い。どうしてくれるのかな

慣れてる感あるなぁ
それはまるで仕組まれたシナリオのように⋯と思ってしまうのは勘ぐりすぎか?実際のところ工事日に傷がついたと思うほうが自然であるが⋯ここに至るまでの経緯が素直にそう思わせてくれない。
それこそ動画を終始撮っていたのだから見せてくれればいいのに、そこは映ってないからと拒否されては何のための記録なんだと。こんなもん言ったもん勝ちじゃねーかよ。

前に壁を傷つけた業者がいたんだけど、そこには示談金として◯◯万円もらったし、その壁を補修した別の業者には気に入らないから2度やり直させたんだよねw

頭に蛆でも湧いてんのかな?
絶対的優位な立場に気が緩んだのか、はたまた自分はこういう輩ですよとの脅しのつもりなのだろうかはわからないが⋯過去のトラブル履歴を聞いてもいないのにべらべらと語りだしたのはどういう意図があったのやら。

普通の感覚してたらこんな事他人に言えないだろうに。

誰がやったかわからんし、こうなった以上直さないと駄目だろうねえ⋯

う~ん⋯何か釈然としないが、、、まあ仕方ない・・・のか?
仕事を終えとりあえず戻って作戦会議。一応依頼主であるメーカーさんにも報告はせざるを得ないのだが⋯

気を付けてくださいとあれほど言ったじゃないですか⋯あとはそちらで処理してくださいね

もうこいつらの仕事絶対請けねえ⋯
メーカーサイドは早々に知らんぷり。こういう可能性のある客だとわかって振ってきたくせに⋯特別料金も載せずにこの態度にはアタッマきたが、今それを論じても始まらない。おまえらとの戦争は後じゃ!!
ちなみに今回傷がついてしまった床はフローリング。そこに20cm程度の引っかき傷のようなものが伸びていた。

画像はもちろん拾い物だが、似た感じ。何かを引きずったような後なので、それがビスや工具だろと言われても納得はするのだが⋯しかし作業範囲と離れた場所だけにどういう状況でそれが起きたかと考えると、やはり釈然とはしない。
しかしまあ、これを直すのがそこまで難しくないのも知っている。
ホームセンターなどにいけばリペアグッズが売ってるのはわかっているが、相手が相手だけにいちおう本職を呼んで直してもらう事にした。

こんなもんでどう?

あれ?思ったより下手だなこの人⋯

おうおうおう!!!?
これがなんと悪手であった!?
なんという誤算か。妻の母のお友達とやらに来てもらったのだが、期待していたほど上手には直してくれず、光の加減でまだ傷がわかるぐらいの仕上がりに客は当然納得いかない・・いや、以前にも増してヒートアップしてしまった感すらある。

これじゃ納得いきませんなあ。こうなった以上床全面張替えしてくれないと

・・・はい?

だから、キレイに直せないんなら床全面張替えしかないよねって

頭に蛆湧いてんのかこの野郎
驚いた。まさかの全面床張替え要求ときた。どこぞの世界に20cm程度の傷のために床全面張替えを要求するバカがいるのだ。しかしお客様はそれをしろと言って聞かない。
というか、既に全面張り替えの見積もりを工務店に貰っていてそれを出してきたのだ。総額150万円。手際が良いなんてレベルじゃない。当たり屋みたいなもんだろこれ。

よろしい、ならば戦争だ!

あんたじゃ話がこじれそうだから後は私が対応します
怒り心頭の僕に代わって妻が対策を練ることになった。とりあえず全面張り替えはありえないのだが、それでも相手方が納得いく補修をして原状回復するのが筋という事でまずはツテのツテを頼ってリペアの神と称される職人さんを遠方より呼び寄せた。

まかせとけ!
この職人さんはすごかった。さすが同業から神と呼ばれるだけあって、クレーム案件をこなす事も多いそうで。当然この手の修羅場も相当経験があるとの事で⋯ 現場を見てこれなら大丈夫ですと、、、あっという間にキレイに直してくれた。

どや?

⋯まあ、これなら

!??
その腕で「お客様」を黙らせたのだ。すごいぞ!!!さすが神!!!
というか、神の腕にも驚いたが「お客様」が案外あっさり認めたことも拍子抜けである。どれだけキレイに直そうが難癖をつけて認めないんだろうと予想していただけに⋯実はもうそこまで言ったら弁護士を入れて戦うつもりでいたのだが、杞憂であっ

つづく⋯つづいてしまう。
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