7/29  イタコツアー4

わんこそば。

その名は聞いた事があったとしても、実際にそれを行った事のある人はごく稀であろうと推測される謎のそば。無論そういうには理由があって、一つはそれをやる場所が極端に少ないと言う点。そしてもう一つは、それをやらなくても人生に何の不便も生じない無いという点。

 (俺、なんでこんな事してんだろ・・・)

わんこを一心不乱に食べてる最中、それを感じずにはいられなかった。

 「は~いどうぞー」
 「いかがですかー」

店内にはわんこ投入係である女中さんの声だけが虚しく響いている。

あくる日、僕は岩手在住の知り合いに連れられ花巻は「やぶ屋」という、体を張った店名を掲げるわんこそばの老舗へとやって来ていた。

連れてきてくれた方…まっぱさんと言うのだが、彼はネットを通じて知り合った人である。公務員ながら女性を助手席に乗せて真っ裸でドライブするのが趣味という噂の彼だが、今回はさすがにちゃんと服を着てわんこそばを食してくださいました。

 (五、六・・・へぇ、薬味がこんなにいっぱいあるんだ?)

冒頭でも述べたとおり、そのほとんどの人がわんこそばのマナーや常識なんて知らないと思う。もちろん僕もその一人で、僕がわんこで知っている知識というのは『椀に蓋を閉める事でギブアップの意思表示をする』という事だけである。おそらく上手な人(上手な人?)はその蓋の閉め方一つ取っても鮮やかなものであろうと想像されるが、そんなわけで僕はさっそく失敗してしまったようだ。

 (もう無理・・・蓋、蓋・・・)

結構いっぱい食べてキツくなった頃、別に無理する必要も無いんだよなーという思考の元、チラと蓋に目をやった。すると、蓋・・・蓋

 (あぁっ!)

凡ミスッ・・・!!なんたる悪手ッ・・・!!!

わんこそばというのは、その始まりは椀に被されている蓋を外す所から始まるのだが、僕としたことが蓋を利き手の逆側に置いてしまっていた!!

 「はーいどうぞー(棒読み)」

左手は椀を持ちっぱなしのため、箸を置いて蓋を取りにかかる・・・その刹那、女中の口元に嘲笑とも取れる薄ら笑いが浮かび(被害妄想)、次の瞬間僕の椀にはそばが盛られていた。

 (ぐぬぬ)

実際この女中は凄かった。

いや、恐らくはこの女中だけでは無いのだろうが、彼女たちの蕎麦「を」注ぐ情熱は半端なものではない。あくまで「に」ではなく「を」。

 モグモグ…
  ムグ・・ 

 「はーいどうぞー(棒読み」 

 ぽちゃん。

 モグもぐ・・ムグムg

 「いかがですかー(棒読み)」

 ぽとん。

 むぐぐぐぐ・・・

絶え間なく注ぐ蕎麦の名を、永遠と呼ぶ事が出来たなら。

あくまで客に蓋を閉めさせまいとするその姿勢は、まさしくプロの仕事である。わざとなのか、棒読みでひたすら「いかがですかー」「はい、どうぞー」と、まるで機械のように繰り返されると、蕎麦の単調な味も相まって(わんこは味は二の次というのが基本らしい)マンネリ感の十倍界王拳を引き起こす。終わりの見えないループは人のやる気を奪うとはエンドレスエイトが実証してくれた。こういう盤外戦術を巧みに使うのも彼女らの仕事の一つなんだろう。

しかしそれだけでは終わらない。僕がいよいよ冗談抜きでキツくなってきた頃、椀を敢えて45度くらいに傾けて厳しいですよーという感じでもぐもぐしてたら、驚くことに女中さんはさらに傾斜角を上げて対応してきたのだ!

静と動のコンビネーション!!

(なにィィ!!こいつ、こんな技も使うのかい!!?)

45度の上に85度くらいのお椀が被せられると当然勢いあまった蕎麦が僕の顔を襲う。

 (熱ッ、熱つつっ!!!!)

そうそう、話がちょっとズレますが、僕はこの日までわんこそばが熱いものだと知りませんでした。ずーっとざる蕎麦を天つゆにつけて食べると思っていたのですが、実際は熱いつゆと一緒に一口大のそばがぽちゃんと各自の椀へと投げ捨てられるのですね。そうして何回かそれを繰り返す内に貯まるそばつゆは、テーブル中央にある「つゆ捨て」へとポイッと。

やはりこれも知らなくても何にも不便のない事ですが。

 「も、もう無理ぽ・・・」

結局、今回の僕の場合は素人ということで最後は情けをかけて蓋を閉める隙を与えて頂けたが、ここらへんの女中との駆け引きもわんこそばの楽しみの一つなのかもしれませんね。攻守がハッキリしているので、今にプロスポーツ化もあるかもしれません。

最終的に僕が61杯、まっ裸さんが87杯。

ちなみに成人男性は最低でも50杯は行かなきゃ恥ずかしいらしく、平均で70杯ぐらいだそうなのでやはりこの結果からも僕は惚れ惚れするぐぐらいスリムという事がわかりますね^^

それにしたって、大体わんこ10杯で通常のかけそば1杯分くらいらしいので61杯でも結構がんばったように思えますが…^^;

 (うっぷ・・・)

店を出て、お互いパンパンに膨れ上がった腹を見て、何のためにこんな事したんだろうという気持ちがこみ上げる…  料金は一人3150円。上コースのお値段でしたが、かけそば六杯で3150円かぁ… ううむ。

テーマパークのアトラクション代を払ったような気持ちです。払ってないけどそんな気がしました。ごちそうさまです!

コメント

  1. ( ・ω・)y-~~~~ より:

    あ、あれっ?^^;
    平泉の世界遺産越えてない・・・・・?
    もう盛岡ぐらいかな?

  2. 小島 より:

    俺もわんこそば冷たいと思ってました。
    今でも冷たいものだと信じてます。

  3. iwate より:

    あれ、ソバ嫌いになりかけるよねw
    岩手は、冷麺・じゃじゃ麺・わんこそばと麺類の名物があるけど、正直、どれも「うめぇぇー!」って食い物ではないかも[E:despair]
    それより、被災地を見てきては?
    津波の跡の街(道路なんかはだいぶ整備されたけど)って、おそらく、もう一生見られない光景だと思うよ。。
    帰りには、仙台の牛タンの極上しんタンを食べてって。あれは美味いっすよ!

  4. デし より:

    やぶ屋…超近いけど行ったこと無いなぁ[E:sweat02]
    夏だし帰りに慰霊の森で涼んでって[E:shock]
    (注)本気でヤバイ

  5. 椰子 より:

    蕎麦好きだけど、わんこそばは蕎麦アレルギーになりそうな気がするので一度も経験した事がありません・・・。
    順調に恐山方面に向かわれてるようでよかったです。
    それにしても、特に何もしてないのにもう8月とか時間が経つのが早すぎるorz

  6. umi より:

    >>( ・ω・)y-~~~~ さん
    ( ・ω・)y-~~~~ さんのコメントがあった時点では青森でした。で、昨晩秋田到着。閉店間際にようやくSetuさんを某店にて発見しましたよ。隠し撮りしてたら「怪しいやつが撮影してるとインカムで言うとこだったよ、ハハハ」と言われました。
    >>小島さん
    多分冷やすのが面倒くさいってのも理由の一つじゃないかなーと思うんですが、調理の手間やその他色々の料金設定考えると正直わんこそばってドル箱商品と思いました。
    >>iwateさん
    最近の僕の中に沸き起こった蕎麦の灯が消えかけるところでしたw じゃじゃめん、冷麺は食べてないなー。どうも冷麺が好きじゃないのでじゃじゃめんも喰わず嫌いっていう^^;
    被災地の見学は今回の旅の裏の(というかどちらかと言えばメイン)目的だったのでもちろん回れる範囲は見て廻ってますよ!ただ、それも物見遊山的な面が無いとは言い切れないため、あまり大きな声で言うと不謹慎だの叩かれるかもと思いあまり触れていません。この時代に生きてる以上見ておきたかったお。
    牛タンは仙台に寄った際に食べてきました。最高にうまかったです!厚すぎて普通に焼肉食べてるみたいだった(笑
    >>デしさん
    近いんですか!!でも近くても10年に一回とか人に付き合って、じゃないと絶対いかないでしょうねw 僕ももう今世ではいいかなーという気分w
    慰霊の森は存じませんが、帰りは秋田→山形ルートなので多分そちらは通りません>< 残念! ってか、超常現象は好きだけど怖いの苦手だから行けませんがw
    >>椰子さん
    恐山は一昨日登ってきたのですが、驚愕の出来事が!!!ってもったいぶる程でもないかw もはや旅の目的の95%を終了してしまったので道なりに帰るのみです。
    そういや今日から八月か・・・・ はぁ。。。

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