「うみちゃん、うみちゃん、是非オススメしたい本があるんだけど(゚∀゚)」
職場の事務のおばちゃんが一冊の本を持ってきた。この人は趣味が読書というぐらい本が好きらしく、しかし職場で本を読む人がいないため感想など話し合える相手がいないのが長年の悩みであったらしい。僕が少なからず本を読む輩だとわかった辺りからやんややんや本の話をするようになっているのだが…
とは言え僕も広く浅くいろんな本を読むタイプではない。むしろ好きな本を何遍も読み直して理解を深める事に喜びを感じる方であり、このときはちょうど名作「ドサ健博打地獄」の六周目に入っていたところだ(何度読んでも面白い、すごい作品である)。対しておばちゃんは話題作や映画原作など流行物を追うタイプなので、実際のところ感想を言い合える共通の一冊と言うのも少ない。
最近だと遠藤周作の話題がきっかけで、「沈黙」が映像化した際にようやっと話せたぐらいだろうか。その時ちょうど伊藤計劃の「ハーモニー」も映画化が決まり、なるほど映像化作品の方がいいのかと原作を貸してはみたものの、難しすぎてわからないと突っ返された。
(確かに普段SFを読まない人にいきなり見せる内容じゃなかったかw)
さすがに貸す本を間違えたと後悔し、以後なんとなく本の貸し借りは難しいね、と言うような空気が漂い続けていた先の今回の推薦図書だ。よほどの自信があるに違いない。
それこそ万人が評価する相当な作品に違いないと、期待に胸を膨らませて読み進めてみたのだが…
(こ、これは(;^ω^)…)
恩田陸さんの作品で、直木賞受賞作らしい。タイトルから内容が想像できなかったが、どうやら音楽…ピアノコンクールを取り巻く人間ドラマを描いた作品のようだ。
(そういえば恩田陸という名はちょくちょく耳にするが作品を見たことは無かったなー)
期待してまず数ページ流し読みをして・・・
(うん・・・?)
単なる僕の経験談ではあるが、面白い小説というのは導入からして引き込まれるものだが、本作はそれを感じられないどころか冒頭を読み進めて少しした辺りからある疑惑が頭を過ぎって離れない。
(これ、、ピアノの森と似過ぎじゃね(;^ω^)?)
ご存知、音楽漫画の金字塔(?)ピアノの森。少なくとも音楽漫画を語る際、この名が出てこない事はほとんどないというぐらい有名な漫画であろう。僕もコミックスが実家にあるぐらい好きな作品で、これを読んだせいで一時期友人の結婚式でピアノ生演奏(風エアピアノw)をやろうと本気で画策するくらいに血迷わせて頂いた名作である。
この作品にも当然コンクールでの人間ドラマの描写はあって、そりゃピアノを扱う以上コンクールが舞台って点で似ちゃうのは仕方ないのかもしれないが・・
(いや、どう好意的に解釈しようとしても色んな部分が似すぎてんべ(;^ω^))
まず主人公。親の影響で特殊な環境で育っており、まともな音楽の教育を受けてこなかったにも関わらず、いや、だからこそなのか彼にしか出せない特別な音で周囲を魅了する。しかしその型破りな演奏は減点方式のコンクールでは忌避されるべくものであり、観客の熱狂とは裏腹に審査員の不況を買ってしまいがち。背後には業界内でその名を知らぬものはいないという孤高の(ここ大事)天才ピアニストの師匠がいて、その影響もあってか良くも悪くも常に注目の的に・・・
とりあえず、物語の核となるであろう主人公の設定、ここらへんが全く同じであるw
コンクールが舞台な以上、破天荒な演奏で審査員の不況を買うという流れは主人公のキャラ設定からして自然とそうなってしまうものなのかもしれないが・・・ しかし師匠筋まで世界的有名ピアニストとあらばもはや言い逃れはできまい(;^ω^)
気になって調べてみると、出るわ出るわ・・・w似たような感想。
中には「恩田陸という人はそもそも作家のオリジナリティーを否定していて、パクリを追及されると設定をもらっただとかオマージュだとか言うような事もある」、などとも書かれているサイトもあった。実際この作品以外にもパクリ疑惑は数多くあるらしく・・・恐らく今回も間違いなくピアノの森は知ってて書いているのだと思われる。
だから、というわけではないが・・・正直面白いとは言い難かった。
音を文章だけで表現するというテーマで書いた作品らしいが、その気概は良し。が、するとどうしたって比喩や風景描写で表現する事が多くなりがちで、それは文章だけでという足かせの中で仕方の無いことかもしれないが、後半に入るとひたすらそれらがくどくてたまらない。
ピアノの森はその点「絵」でも表現できていて、それが音楽を知らない僕にも理解を助ける要因になってた事は否定しないが…恩田陸のそれは後半になるにつれ「おうおう、ようやるわ~」という呆れにも似た想いに変わっていく。
確かにさすがと言わざるをえない表現力ではあるが、段々と何を伝えたいのかよくわからなくなっていき、そこにはクドさだけが残るのだ。
しかしそういう描写よりも気になったのが、登場人物たちの「感じ方」。これは音に対する、個々のピアノに対する感想という意味だが・・・例えば誰かが心の中で「スイスらしい青を連想させるような音だな」などと思うと、同時に登場人物BもCもDも誰もが同じような感想を個々に抱いてて、ただの一人もそれを否定する者が現れない。一体いつからスイス=青になったのだと(あくまで一例です)、これは登場人物達の感想というよりも、単に作者がそう思わせようとしているだけという気がしてならず、全てが予定調和と言おうか、こんな調子でラストまで全く波乱が起きず見ていて退屈な事この上無い。
だが考えてみるとこの作品はSFでもミステリでも無い。波乱や大どんでん返しを期待する方がおかしいのかもしれないが・・・
(おばちゃん一家はこれを見て泣いたって言ってたけど・・・一体どの場面で泣けるんだ??)
さてこうなると困った。あれだけ目を輝かせて貸してくれた作品に対して正面切ってつまらなかったというのもさすがに気が引けるし、褒めるところと言えば音に対する比喩表現、語彙力が半端ないっすね!というとこぐらいしか思い浮かばないが・・・
ではせめてその比喩力や語彙力がどれぐらい的を射ていたかを知るために、作中で演奏されている曲を聞きながら当該箇所を読み比べてみたりもしたのだけれど・・・聞けば聞くほど逆に何を言っているのか全くわからなくなってしまったw
呆れるぐらいにクドかった比喩表現も、単にそれっぽい言葉を並べていただけなんじゃ・・・という思いが浮かぶぐらい、これは僕の感受性が乏しいせいなのかもしれないけれど、逆に言えば作者の感想をつらつら並べていただけとも言えるのではないか?そもそも音に対する感じ方が同じという方がおかしいのだ。だから作中の登場人物達の「感じ方」に違和感を覚えたわけだし・・・
(ハッ!?)
ここである仮説が生まれる。
もしかしたら、僕に音楽的素養がないからこの作品の真の面白さを理解できなかったのでは無いか。もしや音に対する感覚ってのは皆ある程度確立されたものがあって、この作品は音を立体的に視える人が読んでこそ真価が発揮されるのd
「うみちゃんうみちゃん、あの本実写映画化するらしいよ(゚∀゚)」
「えぇ・・・」
大丈夫かよ(;^ω^)音を文字で表現してこその作品だったのかもしれないのに、その音色を普通に表現してしまったら内容自体はヤマなしオチなしの苦痛ものだぞこれ・・・
とりあえずおばちゃんにはピアノの森を全巻貸すことにする。或いはピアノの森を知っているか否かで評価が変わったり・・したら面白いが、逆は絶対無いと思う辺りが本作に対する僕の評価であーる。
おばちゃんはもう本を貸してくれないかもしれないなw
コメント
一の世界ですか(*´ω`*)
おばちゃんもパクリだと気付くといいですね
そんなに似てるんですねー笑
恩田陸さんは夜のピクニックくらいしか読んだことないけど
特段心に響くようなことは無かったですね。
まぁ小説はホントにおすすめとか難しいです、特に年代が違うと尚更ですね。
あ、2年くらいかかったけどようやく先週岳飛伝まで終わりました!
確かに最後の方は…って感じでしたが面白かったです笑
ピアノの森は読んだことあります
たくさんの作品がある中で設定が似るのは仕方がないけどパクリと思われるほどのはちょっと勘繰ってしまいますね
最近本読まないなー少し前に読んだのは火車だったかな意外とミステリー好きだったりしますw
芸術は様々なジャンルで細分化されてるのに、読書となると好きな人が少ないせいか、あまり細分化されてないんですかね?
本当に趣味が一致する人なんて滅多にいないし、いたら宝なんでしょうね。
ところで、中高生の時の同級生と会うと今の立場関係無しに昔の関係に戻りません?
我々の中で一番イジられるのは弁護士先生様ですw
そして、やはりブッキーって呼ばれるんだよなあ。
一緒に起業したヤツらは武器屋かブッキーって呼んでくるし、矢吹さん呼ばれたら余所余所しさを感じちゃうわ。
だが、うみよ、お前はまだ早い。矢吹さんと呼びたまえ。ヨシホイ、お前もだぞ?
お前らは知り合いの石田さんをダイシと呼ぶ所から始めなさい。
>>kenjiさん
貸してみたところ、一応今のところ本当にそっくりだね!とは言ってますけど、パクリとは思いたくないでしょうね。自分の感動を否定するようでw
>>Ajaxさん
ピアノの森知ってる人が読んだら10人中9人は「ん?」と思う設定だと思いますw自分も本作で心に響く部分が皆無でしたので、恩田陸作品の次を読む機会があるのか微妙です。それでも絶賛している人も数多く存在するようで、オススメというか趣向というのは違うんだなーと感じるばかり。
岳飛伝読み終わりましたか!色々とお疲れ様ですw面白いとは思いますがあれはあれで薦めるのを躊躇いますね、量的にwではそのままチンギス記へ突入してください(゚∀゚)
>>ヨシホイさん
宮部みゆきも何気にブレイブストーリーしか読んだ事がないんだよな(;^ω^)あの人も有名だし一度じっくり代表作を読んでみようかしら・・・ その前にミステリというジャンルをほとんど読んだ事がないのに気がついたw小学生の頃読みまくってた江戸川乱歩の少年探偵団シリーズはミステリに入るのかなw
>>武器屋さん
いやいや、読書好きが少ないって事はないでしょー。むしろ細分化されすぎてて趣味が合う人が少ないというレベルだと思いますよ。
その点パチンコやギャンブル系は分かりやすすぎて萎えますねw趣味の一致を喜ぶどころか世間に隠したくなる後ろめたさというか恥ずかしさすらあります(;^ω^)
中高の同級生とは・・・普段からよく会う友人関係だとそうですね、未だにガキのままの温度で接しがちです。金では買えない関係ですね(゚∀゚) 薔薇の女性ともども大事にしてくださいw